山田太陽 小説。 恋の行方は??

山田風太郎 おすすめランキング (1297作品)

山田太陽 小説

この小説の発表は1963年だから、1964年発表の中井英夫『虚無への供物』の前年になる。 どちらもやり場のない怒りが動機の根底にある。 『虚無への供物』では洞爺丸事故での不条理な多数の死者、そしてこの小説では太平洋戦争と特攻隊の悲劇。 「いったい、あの大犠牲に何の意味があったのか?」 犯人の内面で繰り返され、増幅してきた問いが、ある時目にした言葉で明確な形になる。 「誰カガ罰セラレネバナラヌ」 ここで語られる犯罪、謀略は、風太郎の初期の短編『眼中の悪魔』にも萌芽が見られるが、この小説で複雑かつ綿密な構成を備えて完成し、数年後の『妖説太閤記』での謀略の怪物としての太閤秀吉へと発展していく。 シェークスピアの『オセロー』に出てくるイアーゴーの奸計を思い出す人もいるかもしれない。 やり場のない怒りの種があふれ、その怒りの矛先も、そして罰を実行する手立ても、ネットやSNSなど容易に見つかる現代、いつでも我々はこの目に見えない遠隔の悪意の実行者にも、被害者にもなりうる。 山田先生の長編ミステリーを代表する傑作と言って良いのではないか。 全体を構成するミステリー的技巧もさる事ながら、戦争体験を経た山田先生の思惟がこれ程ストレートに出ている作品は珍しいのではないか。 常に戦争及びその首謀者を批判し、その反動とも言うべき反骨精神を体現していた山田先生の中にこうした感情が潜んでいたとは新鮮な驚きでもあった。 作中の、「誰カガ罰セラレネバナラヌ」との言葉が重く心に響いた。 勿論、構成上の工夫にも新規性がある。 こんなに巧く行くものかという皮相な批判は重いテーマの前に吹き飛んでしまうであろう そうした批判をかわし得る用意周到な記述ぶりでもある。 なまじの戦争文学では及ばない深みがあるのである。 山田先生の作品の中では異色作と言って良いと思うが、ミステリー的アイデアの秀逸さと共に、深い文学性を兼ね備えた貴重な一作だと思う。 読んでいる最中は、若者の破滅を描いた青春小説としか思えなかったが、最後にある人物の独白があり、ミステリー作品へと変貌する。 事件の構造と動機に特色がある。 また、戦争による犠牲の無意味さへの作者のメッセージが込められている。 (ネタバレ) 犯人はこの犯罪を「遠隔操作の殺人」と称しており、これがこの作品の狙い、特色になっている。 作品の初めの方に出てくる、ある書物の内容が事件の真相に直結する核心となっているところが実に巧妙である。 「プロバビリティーの犯罪」で、遠大で相当大掛かりな計画に基づく犯罪であり、このようなタイプのミステリーを読んだときにいつも感じることだが、そんなに都合よくいくだろうかという疑問は持たざるをえないが。 各章の「死刑執行・〇〇前」という見出しがミスリードになっているところも面白い。 動機の間接性、屈折している点も、この作品の特徴である。 犯人の戦争時の体験と、その後の人生で気づかされた戦争犠牲の無意味さ。 「誰カガ罰セラレネバナラヌ」というメッセージに触発されて行われた「観念」による殺人である。 アラン・ドロン「太陽がいっぱい」と黒澤明「天国と地獄」を足して2で割ったようなプロットで始まるミステリ。 最初の章タイトルが「死刑執行・1年前」で、次が「死刑執行・8ヶ月前」。 それだけでドキリとする。 「1か月前~1日前」の章までは不穏な恋愛小説として話が淡々と進むが、そのすべてにまったく違う意味が隠されていたことが、終章「死刑執行当日」で明らかになる。 この終章はかなり長いのでファイナルストライク的な衝撃はないが、論理のあまりにアクロバチックな展開に、読者は愕然とする。 これは犯罪小説なのか、ミステリなのか。 呆気にとられボーゼンとしてしまう。 動機はあり、周到な準備のもとに時間をかけて犯罪が行われ、人が殺された・・・ 確かに完全犯罪だが実に漠としているので、人はこれを犯罪とは認めないだろう。 犯罪の動機、構造とトリック、すべてが類例をみない奇想だ。 傑作かどうか出来は別として、風太郎以外には絶対に書けない異様なミステリだ。 いちばん下のピースをコンと弾き出すと全体が一瞬で崩壊する、その感覚が爽快でいいのだが、本作で風太郎は戦中派の想いを珍しいくらい生々しい語り口で書きつけており、重苦しくて爽快感は生まれない。 しかし、それがこの小説の眼目だろう。 イケメン苦学生は,アルバイトで金持ちの家を訪れ, そこで知り合った女性に誘惑されたことから人生が狂い始める. 恋人やバイト先の同僚まで巻き込んだ転落の真相は? ミステリーのテーマとなるのは,Who done it? ,またはHow done it?であるが, 本作品のテーマは,ストーリー全体を通して裏で何が行われたのか,すなわちWhat is done? である. 殺人があって,トリックがあって,真犯人と真相を暴くという古典的ミステリーとは違うタイプの 今風のミステリーであり,終戦から間もない時代を舞台にこんな作品が書かれていたことに, 作者の先見性を感じる. 真相の隠し方やミスリードもうまく機能しているし, このような犯罪にリアリティを持たせる時代背景もよく描かれている. 転落する2人の若者の心理など,今の時代では成立しないであろうが, 一方で犯罪の動機は現代の愉快犯的であり,このあたりのギャップも面白い. ただ,途中で断りなく一人称視点が変わったりするので, 明かされていない真相の存在に気づいてしまうのが少し残念..

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読書日記『太陽黒点』(山田風太郎)/2019年12月28日|ななし|note

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来歴・人物 [ ] (現)出身。 に卒業。 54年京大人文科学研究所助手、65年京都大学教養部講師、助教授、教授。 94年定年退官し名誉教授の称号を辞退する。 「」 や同人誌「」の活動に参加し、1982年「コーマルタン界隈」で文部大臣賞、97年「ああ、そうかね」で受賞。 小説・エッセイ・翻訳などの著書が多数ある。 著書 [ ]• スカトロジア 糞尿譚 未来社 1966 のち講談社文庫、福武文庫• 幸福へのパスポート 河出書房新社 1969 のち講談社文庫、編集工房ノア• 選ばれた一人 河出書房新社 1972• 教授の部屋 河出書房新社 1972• ヴォワ・アナール 山田稔エッセー集 朝日新聞社 1973• 旅のいざない 冬樹社 1974• ごっこ 河出書房新社 1976• 旅のなかの旅 新潮社、1981 のち白水Uブックス• コーマルタン界隈 河出書房新社、1981 のちみすずライブラリー• 生命の酒樽 筑摩書房 1982. 詩人の魂 福武書店 1983. 影とささやき 編集工房ノア 1985. 特別な一日 読書漫録 朝日新聞社 1986. 9 のち平凡社ライブラリー、編集工房ノア• 再会・女ともだち 新潮社 1989. 9 のち編集工房ノア• 生の傾き 編集工房ノア 1990. シネマのある風景 みすず書房、1992• 太陽の門をくぐって 編集工房ノア 1996. ああ、そうかね 京都新聞社 1996. 北園町九十三番地-さんのこと編集工房ノア、2000• リサ伯母さん 編集工房ノア、2002• あ・ぷろぽ-それはさておき 平凡社、2003• 残光のなかで 山田稔作品選 講談社文芸文庫、2004• 酒はいかに飲まれたか 編集グループSURE、2004• 八十二歳のガールフレンド 編集工房ノア、2005 - 表題作は、について• 富士さんとわたし-手紙を読む 編集工房ノア、2008• マビヨン通りの店 編集工房ノア、2010• 天野さんの傘 編集工房ノア、2015• こないだ 編集工房ノア、2018• 山田稔自選集1 編集工房ノア、2019• 門司の幼少時代 ぽかん編集室、2019 共編著 [ ]• クラウン仏和辞典 、、、、らと編纂、三省堂、1995• 何も起らない小説 編集グループSURE 2006 翻訳 [ ]• 十八世紀フランス文学 V. ソーニエ 、共訳 白水社・文庫クセジュ、1956• 全集 第1巻 ふくろう党 、田村俶共訳 東京創元社、1961• ナナ 世界文学全集 河出書房新社 1965• 三つの物語 世界の文学 中央公論社、1965• フィレンツェのペスト フローベール全集 筑摩書房、1966• クロードの告白 ゾラ 世界文学全集 河出書房新社 1967• 著作集 15 書簡 2 1929-1940 、共訳 晶文社 1972• 悪戯の愉しみ 短篇集 出帆社 1975 のち福武文庫• 小鳥の園芸師 白水社 1982. 傑作短篇集 福武文庫、1990• 『フランス短篇傑作選』、1991年。 「ヴェラ」• 「幼年時代」• 「親切な恋人」アルフォンス・アレー• 「ある歯科医の話」• 「ある少女の告白」• 「アリス」シャルル・ルイ・フィリップ• 「オノレ・シュブラックの失踪」• 「ローズ・ルルダン」• 「バイオリンの声をした娘」• 「タナトス・パレス・ホテル」• 「クリスチーヌ」• 「結婚相談所」• 「大佐の写真」• 「ペルーの鳥」• 「大蛇」• 「ジャスミンの香り」• 「さまざまな生業 抄 」トニー・デュヴェール• 「フラゴナールの婚約者」• ロジェ・グルニエ『チェーホフの感じ』みすず書房、1993年。 フラゴナールの婚約者 ロジェ・グルニエ みすず書房 1997. 黒いピエロ ロジェ・グルニエ みすず書房 1999. 六月の長い一日 ロジェ・グルニエ みすず書房 2001. 『 短篇と手紙』 ・・訳、山田稔編、みすず書房、2001• シャルル=ルイ・フィリップ『小さな町で』みすず書房、2003年。 ロジェ・グルニエ『別離のとき』みすず書房、2007年 関連項目 [ ]• 脚注 [ ]• 『残光のなかで 山田稔作品集』講談社文芸文庫、年譜•

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【感想・ネタバレ】太陽黒点 山田風太郎ベストコレクションのレビュー

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*高木彬光との合作。 警視庁草紙(ちくま文庫) 「オール讀物」昭和48年7月号〜昭和49年12月号初出 明治断頭台(ちくま文庫) 「オール讀物」昭和53年5月号〜昭和54年1月号初出 明治波濤歌(ちくま文庫) 「週刊新潮」昭和54年9月13日号〜昭和55年12月24日号初出 妖怪異金瓶梅[完全版](扶桑社文庫) 「赤い靴」講談倶楽部 昭和28年8月増刊 「美女と美童」面白倶楽部 昭和29年4月号 「閻魔天女」小説倶楽部 昭和29年8月号 「西門家の謝肉祭」小説公園 昭和29年12月 「変化牡丹」キング 昭和29年6月号増刊 「銭鬼」宝石 昭和29年4月号〜6月号 「麝香姫」キング 昭和29年10月号増刊 「漆絵の美女」キング 昭和29年9月号 「妖瞳記」別冊宝石 昭和29年11月号 「邪淫の烙印」読切小説集 昭和31年5月号 「黒い乳房」講談倶楽部 昭和32年4月号 「凍る歓喜仏」講談倶楽部 昭和32年8月号 「女人大魔王」講談倶楽部 昭和32年11月号 「蓮華往生」講談倶楽部 昭和34年1月号 「死せる潘金蓮」講談倶楽部 昭和34年4月号 「人魚燈籠」読物娯楽版 昭和30年4月号 *「邪淫の烙印」の原型作品 本稿作成にあたっては、初出は山田風太郎系サイトでは最大手である「」の「山田風太郎作品リスト」を参照し、各巻の巻末の解題と異同がある場合は巻末の解題に従った(「黄色い下宿人」は除く)。 山田風太郎作品年譜(ミステリ編) 昭和22年(1947) 達磨峠の事件(「宝石」1月号) *探偵小説専門誌「宝石」の第一回懸賞入選作。 山田風太郎ミステリはここから始まる。 なお、昭和24年11月に出版された『眼中の悪魔』収録の「雪女」は第1回懸賞に同時に投稿されたもの。 他には 飛鳥高「犯罪の場」/鬼怒川宏「鸚鵡裁判」/独多甚九「網膜物語」/香山滋「オラン・ペンデクの復讐」/岩田賛「砥石」/島田一男「殺人演出」 が入選。 昭和23年(1948) 虚像淫楽(「旬刊ニュース」五月号) *新人作家コンクール参加作品。 1位を獲得。 その他の参加作品は 島田一男「太陽の眼」/香山滋「緑色人間」/岩田賛「絢子の幻覚」/天城一「高天原の幻覚(「高天原の犯罪」と後に改題)」 の四編。 「みささぎ盗賊」が第1回探偵作家クラブ賞短編賞の候補に挙がるも受賞に至らず。 昭和24 年(1949) 「眼中の悪魔」「虚像淫楽」の2作が第2回探偵作家クラブ賞短編賞受賞。 この時、短編賞の他の候補作は 「天狗」「赤痣の女」(大坪砂男)/「猫」(角田喜久雄)/「蜥蜴の島」(香山滋)/「黒猫」(横溝正史)/「太陽の眼」(島田一男) 以降 「天国荘綺談」「下山総裁」(昭和26年)「帰去来殺人事件」(昭和27年)「墓掘人」「赤い靴」(昭和29年)「二十世紀ノア」(昭和30年)「ノイローゼ」(昭和31年)らが候補に挙がるも、いずれも受賞せず。 11月 処女短編集『眼中の悪魔』を岩谷書店から刊行。 収録作は 眼中の悪魔/虚像淫楽/手相/万太郎の耳/達磨峠の事件/雪女/みささぎ盗賊/芍薬屋夫人 の8編。 昭和25年(1950) 天国荘綺談(後に「天国荘奇譚」と改題)(「宝石」一月号) *後に書かれることになる連作短編『青春探偵団』の原型とも言うべき作品。 昭和26年(1951) 悪霊の群(「講談倶楽部」十月号〜昭和二十七年九月号) *高木彬光との合作。 名探偵荊木歓喜登場作品。 高木彬光擁する名探偵神津恭介との共演。 執筆は山田風太郎が担当。 初単行本化は昭和30年大日本雄弁会講談社より。 昭和28年(1953) 赤い靴(「講談倶楽部」八月号増刊) *奇跡的な傑作『妖異金瓶梅』第一話。 遅れた原稿料のお詫びにもらった『金瓶梅』が元ネタ。 版元にお金がなかったという当時の事情はさておき、『金瓶梅』を渡した編集者は偉い。 ちなみに、遅れた原稿料は「厨子家の悪霊」のものらしい。 『妖異金瓶梅』は後に書かれる忍法帖の橋渡しになる。 『妖異金瓶梅』の初単行本化は昭和29年大日本雄弁会講談社から『妖異金瓶梅』として刊行された物であるが、現行版と違い、前半部分のみである。 後半部分は昭和34年に講談社から刊行された『秘鈔金瓶梅』に収録。 現在の形で刊行された最初は昭和42年10月に桃源社から刊行された版である。 それぞれの収録作品は 『妖異金瓶梅』 赤い靴/美女と美童/閻魔天女/西門家の謝肉祭/変化牡丹/銭鬼/麝香姫/漆絵の美女 『秘鈔金瓶梅』 妖瞳記/邪淫の烙印/黒い乳房/凍る歓喜仏/女人大魔王/蓮華往生/死せる潘金蓮 黄色い下宿人(「別冊宝石」12月号) *ホームズパロディ。 この作品のあまりにもの出来の良さに、編集部が海外作家贋作特集を組む為他の作家に贋作を注文したというエピソードもある。 その時の贋作特集に寄せられたのは城昌幸「ユラリュウム」(E・A・ポオ)、高木彬光「クレタ島の花嫁」(ヴァン・ダイン)、島田一男「ルパン就縛」(ルブラン)、大坪砂男「胡蝶の行方」(チェスタトン)。 「クレタ島の花嫁」は現在では二階堂黎人編『密室殺人大百科』に、「ルパン就縛」は扶桑社文庫《昭和ミステリ秘宝》『古墳殺人事件』に収録されているものが入手容易。 昭和31年(1956) 十三角関係(大日本雄弁会講談社 1月) *名探偵荊木歓喜が活躍する長編。 『十三角関係』は書き下ろし探偵小説全集の10巻目の配本。 全13巻刊行予定だったが、全11巻で終了。 余談だが、十三巻目の椅子を巡る公募で十三番目の椅子に鮎川哲也『黒いトランク』が入選。 この公募が後の江戸川乱歩賞になり、第零回江戸川乱歩賞とも言われることもある。 1月 『拳銃対拳銃』のタイトルで『悪霊の群』が映画化。 監督は小沢茂弘。 配役では荊木歓喜と神津恭介はない。 12月 『高校生と殺人犯』公開。 原作に山田風太郎の名前はあるものの、何が原作かは不明。 昭和33年(1958) 誰にも出来る殺人(「講談倶楽部」一月号〜六月号) *初単行本化は昭和33年7月に講談社より刊行された物。 東京文芸社版と廣済堂文庫版は『誰にもできる殺人』となっている。 山田風太郎が得意とした長編化する連作短編、の最初の作品。 収録作は 女をさがせ/殺すも愉し/まぼろしの恋妻/人間荘怪談/殺人保険のすすめ/淫らな死神 の6編。 落日殺人事件(桃源社 7月) *荊木歓喜の短編での活躍の初単行本化。 収録作は 歓喜登場(チンプン館の殺人)/抱擁殺人/西条家の通り魔/女狩/お女郎村/落日殺人事件/帰去来殺人事件 の7編。 『落日殺人事件』がタイトルなのはこの桃源社版だけ。 他の版は『帰去来殺人事件』。 平成8年出版芸術社より復刊された際に「怪盗七面相」が増補される。 笑う肉仮面(東光出版社 12月) *光文社文庫から『笑う肉仮面』が出るまでは山田風太郎の唯一の少年物単行本だった。 古書価20万円したとかしないとか。 収録作は 笑う肉仮面/なぞの黒かげ の2編。 昭和34年(1959年) 青春探偵団(講談社 1月) *収録作は 幽霊御入来/泥棒御入来/屋根裏の城主/砂の城/特に名を秘す の5編。 現在流布している『青春探偵団』に収録されている「書庫の無頼漢」は平成九年の廣済堂文庫版が最初の収録。 昭和39年の東京文芸社版では『殺人クラブ会員』と改題された。 おんな牢秘抄(「週刊実話特報」昭和34年4月15日創刊号〜12月10日号) *初単行本化は東都書房より昭和35年1月に刊行された物。 昭和36年(1961) 棺の中の悦楽(「女性の記録」9月号〜昭和37年1月号) *初単行本化は昭和37年3月桃源社より刊行された物。 昭和37年(1962) 夜よりほかに聴くものもなし(「時」1月号〜12月号) *初単行本化は昭和三十七年十二月に東都書房より刊行された物。 収録作は 証言/精神安定剤/法の番人/必要悪/無関係/黒幕/一枚の木の葉/ある組織/敵討ち/安楽死 の10編。 昭和38年(1963) 太陽黒点(桃源社 4月) *書き下ろし長編。 予告では『射殺権』や『脳人』、『将棋倒し』といった仮題がついていた。 昭和39年(1964) 環(「推理ストーリー」1月号)を最後に昭和四十八年迄ミステリ関係の新作はほぼ途絶える。 その間は時代小説や忍法帖がほとんどの割合を占める。 8月 東都書房より《山田風太郎の妖異小説》が全6巻予定で刊行開始。 10月完結。 ミステリ関係は 『妖異金瓶梅』『秘鈔金瓶梅』の2冊。 10月 桃源社のポピュラーブックスより《山田風太郎奇想小説全集》刊行開始。 全6巻。 昭和40年3月完結。 昭和54年の《山田風太郎奇想小説》全6巻はこれの再刊。 9月に完結。 収録されたのは 『誰にも出来る殺人』『十三角関係』『太陽黒点』『夜よりほかに聴くものはなし』『眼中の悪魔』(飛ばない風船/鬼さんこちら/動機/賭博学大系/ノイローゼ/不死鳥/知らない顔/露出狂奇譚/眼中の悪魔)『棺の中の悦楽』 8月 『棺の中の悦楽』が『悦楽』のタイトルで映画化。 監督は大島渚。 昭和46年(1971) 10月 講談社より《山田風太郎全集》が全16巻で刊行開始。 昭和48年1月完結。 この中でミステリ関係は 『山田風太郎全集10』(妖異金瓶梅/女人国伝奇/逆櫓試合/麺棒試合) 『山田風太郎全集14』(棺の中の悦楽/陰茎人/蝋人/満員島/男性週期律/自動射精機/ハカリン/万太郎の耳/天国荘奇譚/1999年/最後の晩餐/女死刑囚/紋次郎の職業/黄色い下宿人/蓮華盗賊/万人抗) 『山田風太郎全集15』(太陽黒点/十三角関係/黒衣の聖母/跫音/とんずら/ダニ図鑑/極悪人/祭壇/環/虚像淫楽) 『山田風太郎全集16』(誰にも出来る殺人/夜よりほかに聴くものもなし/死者の呼び声/わが愛しの妻よ/女妖/さようなら/吹雪心中/春本太平記/大無法人/ノイローゼ/飛ばない風船/鬼さんこちら/眼中の悪魔) の4冊。 昭和48年(1973) 警視庁草紙(「オール讀物」7月号〜昭和49年12月号) *明治小説第一弾。 初単行本化は昭和50年3月文藝春秋社より刊行された物。 2月19日 「恐怖劇場アンバランス」の第七話「夜が明けたら」放送。 原作は『夜よりほかに聴くものもなし』の「黒幕」。 5月 講談社より発行された《現代推理小説体系》の七巻目の配本として『現代推理小説体系7 香山滋 島田一男 山田風太郎 大坪砂男』が刊行される。 山田風太郎作品は 虚像淫楽/眼中の悪魔/誰にも出来る殺人 が収録される。 他は 香山滋「海鰻荘奇談」「蝋燭売り」「ネンゴ・ネンゴ」 島田一男『上を見るな』 大坪砂男「天狗」「私刑」 昭和52年(1977) 4月 社会思想社の教養文庫より《山田風太郎傑作選》刊行が開始される。 全4巻。 11月完結。 ミステリ関係は 『夜よりほかに聴くものもなし』(眼中の悪魔/黒衣の聖母/大無法人/夜よりほかに聴くものもなし) 『棺の中の悦楽』(虚像淫楽/万太郎の耳/満員島/棺の中の悦楽/わが愛しの妻よ) 『誰にも出来る殺人』(蝋人/死者の呼び声/黄色い下宿人/さようなら/誰にも出来る殺人/飛ばない風船) の3冊。 昭和53年(1978) 明治断頭台(「オール讀物」5月号〜昭和54年1月号) *初単行本化は昭和54年2月文藝春秋社より刊行された物。 4月 立風書房より《山田風太郎奇怪小説集》が刊行される。 全4巻。 4月と5月に2冊ずつ刊行。 各巻収録作は 『ダニ図鑑』(痴漢H君の話/美女貸し屋/紋次郎の職業/恋罪/最後の晩餐/知らない顔/笛を吹く犯罪/蜃気楼/大無法人/極悪人/ダニ図鑑) 『厨子家の悪霊』(人間華/蝋人/双頭の人/畸形国/黒檜姉妹/青銅の原人/万太郎の耳/眼中の悪魔/厨子家の悪霊) 『黒衣の聖母』(30人の3時間/わが愛しの妻よ/女死刑囚/寝台物語/跫音/とんずら/祭壇/さようなら/黒衣の聖母/女の島) 『男性滅亡』(男性滅亡/二十世紀ノア/臨時ニュースを申上げます/冬眠人間/1999年/陰茎人/ハカリン/満員島) 昭和54年(1979) 明治波濤歌(「週刊新潮」9月13日号〜昭和55年12月24日号) *オムニバス作品集。 初の単行本化は昭和56年6月新潮社より刊行されたもの。 初刊版は「天の巻」「地の巻」の二巻構成。 文庫化されて以降は上下巻の表記。 収録は 天の巻(上巻) それからの咸臨丸/風の中の蝶/からゆき草紙 地の巻(下巻) 巴里に雪のふるごとく/築地西洋軒/横浜オッペケペ 7月 「別冊新評 山田風太郎の世界」が発行される。 中島河太郎の「山田風太郎の風刺と諦観」、宅和宏の「早く来すぎたミステリ作家」等の評論、高木彬光や色川武大などのエッセイが収録された。 「中島河太郎・編 資料室」は日下三蔵の「山田風太郎中毒患者記録」によれば、かなり貴重な資料であったようだ。 昭和58年(1983) 5月 大和書房《夢の図書館ミステリ・シリーズ》より『帰去来殺人事件』が再刊される。 11月に同叢書より『十三角関係』も再刊。 平成5年(1993) 3月 国書刊行会の《探偵クラブ》より『虚像淫楽』刊行。 収録作は みささぎ盗賊/眼中の悪魔/虚像淫楽/蓮華盗賊/黒衣の聖母/死者の呼び声/黄色い下宿人/赤い靴/変化牡丹 の9編。 平成7年(1995) 3月 講談社文庫大衆文学館より 『奇想小説集』刊行。 この講談社文庫大衆文学館ではミステリ関係からは他に 『棺の中の悦楽』(平成8年6月)と 『奇想ミステリ集』(平成9年2月)が刊行された。 『奇想小説集』と『奇想ミステリ集』の収録作はそれぞれ 『奇想小説集』(陰茎人/蝋人/満員島/自動射精機/ハカリン/万太郎の耳/紋次郎の職業/万人抗/黄色い下宿人) 『奇想ミステリ集』(新かぐや姫/女妖/二人/ノイローゼ/目撃者/不死鳥/露出狂奇譚/祭壇/春本太平記/青銅の原人/笛を吹く犯罪/墓掘人/司祭館の殺人) 同月 『美女奉行 おんな牢秘抄』のタイトルで『おんな牢秘抄』が映像化。 ビデオのみか、公開されたか不明。 同月 「GQ Japan」で山田風太郎特集が組まれる。 笠井潔によるロングインタビューや新保博久「乱歩と風太郎」、「全作品紹介、急ぎ足で」(山田風太郎自身によるA〜Cの3段階評価つき)など男性ファッション誌とは思えない充実度を誇る。 収録作は 30人の3時間/さようなら/女死刑囚/跫音/双頭の人/黒檜姉妹/雪女/笑う道化師/最後の晩餐/呪恋の女 の10編。 5月 出版芸術社の叢書《ふしぎ文学館》より 『怪談部屋』刊行。 昭和31年に妙義出版から出ていた同題短編集を大幅に増補したもの。 収録作は 蜃気楼/人間華/ 手相/ 雪女/ 笑う道化師/永劫回帰/まぼろし令嬢/うんこ殺人/陰茎人/二十世紀ノア/冬眠人間/ 双頭の人/ 畸形国/ 黒檜姉妹/ 蝋人 の15編。 妙義出版版は太字のものを収録。 平成8年(1996) 5月 廣済堂文庫で《山田風太郎傑作大全》が 『妖異金瓶梅』を皮切りに刊行される。 平成10年7月完結。 《山田風太郎傑作大全》でのミステリ関係の本は、 『妖異金瓶梅』『十三角関係』『誰にもできる殺人』『夜よりほかに聴くものもなし』『青春探偵団』『天国荘奇譚』(天国荘奇譚/恋罪/ドン・ファン怪談/童貞試験/寝台物語/大無法人/臨時ニュースを申し上げます)『赤い蝋人形』(赤い蝋人形/賭博学大系/美女貸し屋/とんずら/わが愛しの妻よ/痴漢H君の話/ダニ図鑑)『太陽黒点』 の8冊。 『太陽黒点』は帯や裏の粗筋紹介、投げ込みチラシでネタを思いっ切り割っており、一部で話題になる。 『十三角関係』『青春探偵団』『太陽黒点』はこれが初の文庫化。 全24巻。 7月 『帰去来殺人事件』が出版芸術社より復刊。 詳細な著作リスト付き。 平成9年(1997) 菊池寛賞受賞 2月 集英社文庫より風太郎傑作ミステリー『天使の復讐』刊行。 収録作は 狂風図/天使の復讐/色魔/鬼さんこちら/飛ばない風船/知らない顔 の6編。 5月 筑摩書房で《山田風太郎明治小説全集》刊行開始。 第一回目の配本は『警視庁草紙』。 10月完結。 文庫版は全14巻、愛蔵版は全7巻。 6月 ハルキ文庫より《山田風太郎奇想コレクション》刊行開始。 全5巻。 ミステリ関係は 『厨子家の悪霊』(厨子家の悪霊/殺人喜劇MW/旅の獅子舞/天誅/眼中の悪魔/虚像淫楽/死者の呼び声) 『黒衣の聖母』(戦艦陸奥/潜艦呂号99浮上せず/裸の島/女の島/腐爛の神話/黒衣の聖母) 『男性滅亡』(男性滅亡/男性週期律/1999年/自立神経失調同盟/誰も私を愛さない) の3冊。 平成11年(1999) 七月 マガジンハウスムックから『風太郎千年史』(新保博久編)が刊行される。 太字がエッセイ、斜体はインタビュー、残りは小説。 収録作は 赤い靴/銭鬼/山屋敷秘図/忍法棒占い/忍法小塚ッ原/大いなる幻術(水木しげる画、京極夏彦着彩の漫画)/首/東京南町奉行/巴里に雪のふるごとく/黄色い下宿人/ わが家は幻の中/ 父の死/ 風眼帖(1〜4)/ 中學生と映畫/石の下/ 戦中派不戦日記 昭和二十年八月/黒衣の聖母/ わが推理小説零年/達磨峠の事件/歓喜登場/ 奇想とユーモアの異色作家山田風太郎/ 推理交響楽の源流/ 読まなくたってかまわない/ ナンセンスだから面白い/ 自筆死亡記事/1999年 この中での当時の目玉は一九七一年に刊行されたポピュラーブックス版『妖異金瓶梅』に収録されたのを最後に収録されていなかった「銭鬼」や処女短編集以降長らく本に収録されていなかった「達磨峠の事件」であろう。 「大いなる幻術」の原作は「忍者 枯葉塔九郎」。 また、作中の年代順に作品配列が為されている趣向にも注目。 平成12年(2000) 3月 第四回ミステリー文学大賞受賞 同月 東京文芸社版を最後に長らく名前のみの作品となっていた『悪霊の群』が三十六年ぶりに出版芸術社より再刊。 平成13年(2001) 1月 単行本未収録短編を収録した山田風太郎コレクション『天狗岬殺人事件』が出版芸術社より刊行される。 収録作は著作リスト参照。 3月 第4回ミステリー文学大賞受賞受賞記念で《山田風太郎ミステリー傑作選》が全10巻予定で刊行開始。 第1回目の配本は『眼中の悪魔』と『十三角関係』の2冊。 詳しくは著作リスト参照。 各巻解題は日下三蔵が担当。 9月 「NHK金曜時代劇」で28日より「からくり事件帖」が全九回で放送開始。 原作は『警視庁草紙』。 10月 《KAWADE夢ムック》より『追悼特集 山田風太郎 綺想の歴史ロマン作家』刊行。 詳細な著作リスト付き。 『妖異金瓶梅』の完全版が扶桑社文庫の《昭和ミステリ秘宝》から「第三期 時代篇」のシリーズで刊行される。 内容は廣済堂文庫版に「銭鬼」と新たに発掘された「人魚燈籠」を増補した物。 「人魚燈籠」は「邪淫の烙印」の原型短編。 11月11日「知ってるつもり!? 」で山田風太郎が取り上げられる。 同月 「ユリイカ」で山田風太郎特集が組まれる。 ほかに日下三蔵の手による「山田風太郎執筆年譜」もあり、また、故・中島河太郎との対談も再録されている。 同月 「このミステリーがすごい! 2002年度版」刊行。 7位に『天狗岬殺人事件』が、20位に『忍法創世記』が入選。 その他、追悼特集として「山田風太郎忍法帖ケッサクセン」として忍法帖作品紹介や、「著名人に聞く 私の山田風太郎ベスト」が掲載される。 平成14年(2002) 5月 《山田風太郎ミステリー傑作選》完結 平成15年(2003) 1月 NHKラジオ《青春アドベンチャー》にて『妖異金瓶梅』がラジオドラマ化。 全10回。 2月 山田風太郎コレクションより『十三の階段』刊行 このリストの作成は『追悼特集 山田風太郎 綺想の歴史ロマン作家』(河出書房新社)の著作リスト及び年譜、光文社文庫《山田風太郎ミステリー傑作選》の各巻の改題及び解説、『日本ミステリーの100年』 山前譲/光文社知恵の森文庫)を参考にしました。 なお、過去の映画化に関しての情報はを、探偵作家クラブ賞関係はを参照しました。 『妖異金瓶梅』に関するエピソードは《昭和ミステリ秘法》版『妖異金瓶梅』の解説によります。 「GQ」の作者評価は「2ちゃんねる」のより。 雑誌などの特集は、『追悼特集 山田風太郎 綺想の歴史ロマン作家』と「ユリイカ 二〇〇一年十二月号」以外はを参照しました。 『おんな牢秘抄』の初出出展は (初稿版校正協力・水原晶夫) へ.

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