ラジオネーム恋するうさぎちゃん。 Ayatan|フリマアプリ ラクマ

夏に聞きたい定番曲ランキング!邦楽の懐メロがたくさんランクイン

ラジオネーム恋するうさぎちゃん

【 皆の衆、元気でござるかァ。 拙者は最ッ高に元気でござる~。 こちらは大江戸アワー、お馴染みのポップス・ラジオ・リクエストの時間でござるよ。 これからすンばらしい火曜日の夜に懐かしの曲、思い出の曲、思い出したくない曲まで何でもじゃんじゃんリクエストを紹介していくでござる。 隣でちっとも動かない車のハンドルを真面目に両手で握り続けるのは監察・山崎退。 城での長ったらしい会議を終え、さっさと屯所に戻って土方死ね死ね儀式でもやろうと思っていたのにこの渋滞だ。 通りにはテールランプの明かりがどこまでも赤く瞬いている。 まだしばらくは動きそうにない。 曇ったドアガラスに指で「ひ じ か た し ね」なんて書いてみる。 「おいザキ、なんでィこの番組は。 雌豚くさくてかなわねェや。 落語かけろよ落語。 」 「沖田隊長知らないんですかー?これはいま江戸で一番流行ってるラジオ番組なんですよ~、なんでもここでリクエストが採用されると恋が実るとかで!あまりに人気すぎて江戸以外の地域でも放送されてるんですよ。 僕もたまさんへの想い、リクエストしたんですからね!」 ラジオ番組なんてものに興味はない、聴くのはもっぱら落語ばかり。 それだって色恋ものは聴かない。 常に死戦に身を置く自分にとって色恋沙汰なんてものは最も必要のないものだからだ。 いつ死ぬかもわからない身なのだから、大事なものは少ないに越したことはない。 まぁ、カラクリ娘に絶賛片思い中の監察にとっては色恋沙汰も大切だろうが。 わんわん五月蝿いラジオ番組を聴き流しながら(ほとんど流れてる曲お通ちゃんだけじゃねぇか。 ) 「ひじかたしね」の「じ」の点々の辺りから窓の外を伺うと、真っ赤なチャイナ服が跳ねた。 その横には銀髪の着流し姿。 万事屋のチャイナ娘と旦那かねィ。 ぴょんぴょんと飛びあがりながら旦那の腕に飛びつこうとするチャイナは俺には一度も見せたことのない花の咲いたような笑顔を浮かべていた。 ・・・色恋なんて無様なもんでィ。 思い出すのは幼少期の苦い思い出、首元にちくちくと樹皮があたる楓の木の後ろに隠れて、そっと息を潜めながら姉上と土方の会話を盗み聞いた夜。 きっと土方コンチクショウだって己の道に大事な者を抱えることなど許されないと知っていたのだろう。 *** 大きな捕り物がない限りは公園でのリラックスタイムを一番大切にしている。 何事もオンとオフが大事ってもんでさァ。 公園のベンチでいつも通りアイマスクを付けて一眠りしていると背後からよく知った気配を感じた、殺意ではないが挑戦的なそれ、首元にガシャリと突き付けられるひんやりとした金属。 好敵手のお出ましだ。 「てめェ、昨日の夕方5丁目でうろうろしてただろィ。 」 一戦を交えた後で図々しくも隣に腰掛けた鴇色頭に声をかけると途端、かじっていた酢昆布をぺっぺっと吐き出して俺をギロリと睨みつける。 うわ、きったねぇ。 「ストーカーアルか!このクソサド野郎。 さては銀ちゃんとワタシを尾けてたネ?」 そうそう、この心から嫌で仕方がないという表情、俺に向けられるのはいつもこれでさァ。 「ストーカーとは人聞きの悪いこった。 チャイナ服着た小娘と怪しげな銀髪が道を歩いてたから職質が必要か考えてただけでィ。 」 「うるさいネ。 昨日は新八がラジオを聴かないといけない日だとか言うから銀ちゃんと二人で買い物行ってたアル。 新八がいないから重かったんだぞコノヤロー。 」 てめェは全然荷物持たずに旦那にちょっかいかけてただけじゃねーかと突っ込みたかったが、面倒なのでやめた。 へぇ、やっぱりあの恋するメガネとやらは童貞野郎だったのか。 分かり易すぎだろィ。 「あァ、あのポップス・ラジオ・リクエストとかいうくだらねぇ番組だろィ。 あんなのに好きな奴への思いを送るなんて気色悪いったらありゃしねェ。 」 「お前も知ってたアルか。 恋する人を馬鹿にするなんて最低ネ。 ワタシなんてハガキ送るために毎日文字の勉強してるアル!お前には一生わからないダローけどな。 」 それは、頭の真上からガツンと重いもので殴られたような驚きだった。 つんと鼻にぬける刺激のあと、声が掠れたりしないように必死に平静を取り繕った。 「チャイナァ・・・お前、好きな奴いたの?」 「ワタシはかぶき町の女王神楽様アルよ?好きな男の一人や二人いて当たり前アル。 まぁ、 芋侍にはわからないだろうけどナ。 お前と話してる暇なんてなかったアル、銀ちゃんと待ち合わせしてるからじゃーナ。 」 軽やかに走り去っていく背中をぼんやりと見送る、チャイナに好きな奴。 チャイナの好きな奴。 四つも下のガキだと思っていたが、好きな男の一人くらいいるものなのか、そういうものか。 気付いたらベンチの端を掴む指から薄っすら血が滲んでいた。 頭をよぎるのはあの銀髪の旦那・・・。 まあ、俺には全くもって関係のないことだ。 屯所に戻ると幹部一同集合がかかった。 急遽、大規模な攘夷浪士の動きがあったとかで伊豆の方まで遠征を行うらしい。 近藤さんは江戸を動けないために、土方か俺が遠征を率いるようにとのことだ。 「総悟、お前は江戸に残れ。 今回の遠征はどうも危険だ。 俺が行ってくるから江戸で近藤さんを守るんだ。 」 いつも自分が危険な役割を引き受けようとする気に食わないニコチンマヨ。 何時までも弟分だと思ってやがる。 余計な心配でさァ。 「いや、俺が行きますぜィ、伊豆がキナ臭いってなら尚更だ。 切り込み隊長直々に粛清してやりまさァ。 」 「総悟、お前は危なっかしいから江戸に残るんだ。 この遠征はどのくらい掛かるかもわからねぇ。 俺が伊豆には行ってくる。 」 「嫌でさァ、丁度気分転換でもしたかったんでねェ。 俺が行きやす。 」 しばらくの押し問答のち、山崎も連れていくとの条件で俺が遠征に行くことになった。 近藤さんと土方コノヤローは心配しているようだったが。 近藤さんはまだしも土方については本当に忌々しい限りだ、この遠征でもしものことがあったとしても悔いはない。 そもそも近藤さんと近藤さんの大切な真選組を守りぬくことこそが己の本望なのだから。 なぜだか脳裏には赤いチャイナ服と銀髪がちりちり浮かび上がる。 そう、自分には後ろ髪を引かれるものなどなにもないのだ。 まぁ、道中ザキでもこき使ってやるとするかねェ。 見送りでもしつこく身を案じる近藤さんと土方に背を向けて、夜明け前に伊豆へと向かった。 [newpage] 伊豆に到着してからというもの、攘夷浪士の動きは興醒めするほどになく、ひたすら敵の動きを待って潜伏する日々が続いた。 潜伏先は山奥の小屋で気晴らしになりそうなものは何もない。 こうなると退屈で退屈で仕方がない。 同じ見張りのシフトになりたがる神山を押し退けて「隊長!!この神山死ぬまで隊長にお供いたします!!!」持ち場につくと、ひたすらラジオを聴く。 不愉快なことだが変化のない日々を過ごすうちにチャイナ娘がハガキを出そうとしていたあのラジオ番組を聴くのが習慣になっていた。 潜伏5日目 今夜チャイナからのハガキは読まれるだろうか、 【大江戸アワー、今宵もポップス・ラジオ・リクエストの時間でござる。 今宵も楽しい曲、おすすめの曲、なんでもリクエストを待っているでござるよォ。 それでは最初のリクエストは、ラジオネームISAOさんから、「ケツ毛ごと愛してくれる美しいあの人へ。 愛しています!あの人というかお妙さんっ!聞いていますか!!?」とのメッセージが届いております!はははっ、これは情熱的だ。 ISAOさん頑張ってくださいね。 さてさてリクエストは・・・】 ほろりと笑みがこぼれる。 これじゃあラジオネームの意味がないじゃあないか。 あの人は今日も江戸で姐さん追いかけて元気でやっているに違いねぇや。 自分がいなくてもどうやら江戸はうまくまわっているらしい。 ひたすらアンパンを数える山崎を横目に眠りについた。 潜伏10日目 未だ攘夷浪士に動きなし。 このところ隊士の士気も下がってきている。 そして今夜もチャイナのハガキは読まれない。 【次の今夜のリクエストは、ラジオネーム公園のマダオさんから妻へのメッセージでござるよ。 「聞いているかい??再就職、こんどこそ決まりそうだよ!!」とのメッセージが届いております!マダオさん、再就職上手くいくといいですね。 さて、マダオさんのお気に入りの曲は・・・】 チャイナとよく喧嘩をした公園で段ボールに座っていたおっさんが頭に浮かぶ。 あの人は結婚していたのか。 はは、あんな様子じゃ再就職なんてできるわけねーだろ。 小声でつっこみながら、変わらない江戸の様子が目に浮かび少しだけ心が晴れた気がした。 潜伏14日目 伊豆に来てから二週間が経過した。 今日とて浪士に動きなし。 山崎にいたっては部屋の壁に向かってあんぱんスパーキングをはじめている。 【大江戸アワー、さて今夜もお待ちかねの時間でござる。 それでは今夜のリクエストは、ラジオネームマヨラサーティーンさんから、「お前はマヨネーズをかけるか?俺はデザートにだってかける!!マヨとの仲は誰にも邪魔させねぇ!」とのメッセージが届いております。 マヨネーズはカロリー高いですからね!ほどほどにね!マヨラサーティーンさん!】 マヨくさいメッセージを送りつけたのはあいつだろう。 やっぱり江戸は変わりないようだ。 近藤さんは姐さんを追いかけ、土方コノヤローはマヨ中だ。 さっさとマヨネーズに埋もれて死ね土方。 チャイナはもうハガキを出したのだろうか。 潜伏25日目 いざ討伐と、遠征に来たにも関わらず、既に何もないまま一か月近くが経過しようとしている。 いよいよ隊士の士気は下がり、江戸には何時になったら帰れるのかというぼやきもあちらこちらから聞こえるようになった。 仕方がないので隊を半分に分けて出掛けて来るように言った。 ここまで動きがないのだから自分が残ればしばらくは大丈夫だろう。 いつものように部屋の隅でラジオの時間を待つ。 ここのところずっとラジオを聞いていたがチャイナのハガキらしきものが読まれることはなく、江戸やかぶき町の知った者や知らない者からのハガキが読まれていた。 どうやら世の中には想い人を持つ者が沢山いるらしい、そしてそれぞれが結ばれることを切に願っているようだ。 チャイナ娘が旦那に送る愛のメッセージなんて露ほどにも興味はないのだが、内容を確認して江戸に戻った時には存分に馬鹿にしてやればいい。 それにしても疲れた、ここまで動きがないのだから読みが外れたんじゃないのだろうか。 浪士はおろかどうみても人っ子一人いないうえに外には見張りの隊士がいる。 一眠りするとしようかねェ。 突如、ドオッと轟音が響き、ものすごい速さで障子が吹き飛んだ、吹き飛んだのではない真っ二つに斬られた。 いつの間に囲まれていたのだろうか。 気が付くとぐるりと立ち囲む攘夷浪士達。 数は五十はいるだろうか、五十くらい何てことははないのだが、視界の隅で一番隊の隊士が数名人質に取られている様子から今無闇に斬りかかるのは得策ではないように思われた。 クソッ、一気に片づけてやりたいがここで斬りかかれば間違いなく隊士が斬られてしまう。 「おい、隊士達を全員離しな、そうすれば俺が捕まってやらァ。 」 戦わずして敵に捕らわれるのは不本意だが今はこれ以外に方法はなかろう。 「お前ら平隊士どもを解放しろ、こいつは真選組の沖田だ。 すぐに殺さずに情報を吐かせろ。 」 頭を掴まれて引き摺られ小屋の端の柱にきつく縛られると何か強い香りのものを嗅がされる。 そこで完全に意識が途切れた。 *** 気がつくとふわふわした真っ白な空間のなかにいた。 ここはどこだろう。 温かくて気持ちがいい。 チャイナが俺の横でぴょんぴょん飛び跳ねながら腕をつかんでいる。 やわらかい笑顔で頬を染めるチャイナ。 この顔だ。 そうか自分にもこんな表情を投げかけることもあるのか、胸に暖かい感情がこみあげる。 チャイナは俺の腕をつかんで楽しげなだ。 ふと違和感を感じて視線を落とすとどういうことか自分が着ているのはどこかで見たような白い着流しに流水紋の・・・。 ぎょっとして顔をあげると恨めし気な表情でこちらをじいっと見つめる、黒い隊服の、俺がいた。 *** ずきずきと鈍痛を感じて目を開くと浪士達にぐるりと囲まれていた。 左足に力が入らず上手く動かせない、どうやら気を失っている間に強く殴られたようだ。 「天才剣士沖田もここまでのようだな。 近藤について情報を吐いてもらおうか。 」 にやにやと小汚い笑みを浮かべた浪士が泥のついた足を肩にかける。 いつもなら叩き斬ってしまうところだがそれも敵わない。 嗅がされた薬が効いているのか四肢に力が入らないのだ。 「だんまりか、ツラをよぉく見ればまだまだ子供じゃないか、いいか、近藤について話せばお前は解放してやる。 痛い思いをしたくなければ話すんだ。 」 「上等でィ。 俺は話さねェ。 」 なんとか笑みを浮かべると、体格のいい男たちが間髪を入れず身体を殴りつけてくる。 じりじりとした痛みが続く。 薄くなる意識の中で思い出すのはやっぱりあのチャイナ娘、今頃も旦那と楽しくやっているのだろうか。 江戸は自分がいなくても変わらずにまわっていた。 近藤さんも、真選組もかぶき町の住人もみんなそうだ。 もはやここで死ねるのならばそれこそ本望ではないだろうか、出来れば最期まで刀を振るっていたかったが。 とびとびになる意識の中で、血の匂いと蹴りつける音だけが響く。 その時、重苦しい雰囲気と不釣り合いなメロディがどこからか聞こえてきた。 【みなのものォ!元気でござるかァ!お待ちかねの大江戸アワー、ポップス・ラジオ・リクエストの時間でござるよ。 今夜最初のリクエストは、かぶき町にお住まいのラジオネーム恋するうさぎちゃんからのお便りでござる。 】 そういえば隣の部屋にラジオを置きっぱなしだったのか。 殴られた拍子に鎖骨が折れたのか首回りがじんじんと痛む、抵抗しようにも力が出ない、いや、もはや抵抗しようとすら思えないのだ。 【うさぎちゃんの想い人は、えーっとクソ、サド、ヤロー、クソサドヤローさんとのことです。 「いつも素直になれないけれど、江戸を守る大きな背中が大好きです。 最近見ないから心配しています。 お前をやるのはわたしだから早く帰ってこいよ。 」とのことです。 いやァ、これは今流行りのケンカップルってやつでしょうか。 お熱いですねェ。 それはあいつだけが呼ぶ俺の呼び名。 早く帰ってこいよ、そう言っていた。 ようやく届いた。 あのチャイナがハガキを書いてまで伝えてきた想い。 「生きたい」「帰りたい」という思いがふつふつと湧き出す。 もう一度あの笑顔が見たい。 こんどは笑いかけてくれるのか。 チャイナ、近藤さん、土方コノヤローに真選組の隊士達、旦那にメガネ、姐さん、江戸の見知った顔達。 あァ、もしかしたらずっと誰かからのこの言葉を待っていたのかもしれない。 近藤さんにも土方コノヤローにもそう言われたかったのかもしれない。 ここに来てからずっと誰かに帰りを待っていて欲しかったんだ。 肩にかかる男の足首をぐぐっと勢いよく引き込み、反対側の壁に向かって素早く投げつける。 骨が砕ける音。 慌てて飛びかかってくる者を右足と腕だけで弾き飛ばしていく。 「どうやら俺には江戸に待たせてるやつがいるようなんでねィ。 ここでおっ死ぬわけにはいかねェ」 「沖田総悟、参る。 」 突然のことに騒めき惑う声を聞き、外から慌てて部屋に飛び込んでくる浪士たち。 何人であろうが決してやられるわけにはいかない。 斬りかかろうとする浪士を打ち飛ばし刀で腰の縄を解くと、地面を蹴り上げ素早く間合いを詰める。 飛び掛かって来た者は一太刀で絶命したらしい。 ぶつかり飛び散る血の匂いと刀の擦れる音。 片足が思うように動かないのが不思議なほどに身体は自由だった。 右、左、後ろ、次は斜め、向かい来る浪士たち。 骨を割り、刀を一心に払う。 一体どれだけの時間刀を振るい斬り続けたか。 辺りが見渡す限りの真っ赤に染まっても一向に数は減らない。 左腕が鈍く痛む。 薬が入っていることもあり常と同じようには素早く反応が出来なくなって来た。 刹那、敵の切っ先が鼻先を掠め、世界がスローモーションのようにゆっくり動く、右腕に向けて振り下ろされる刀、あわや効き腕を取られるかと身構えた時、背後から風よりも素早く切りつける音、崩れ落ちる浪士。 「おい総悟!・・・大丈夫か?」 低い声、鋭い刀捌き、やっぱりアンタか。 振り向くと土方が刀を振るっていた。 「ザキ、総悟を連れてすぐに撤退しろ。 残りは俺が抑える。 」 慌てて駆け寄るザキと神山に連れられて山を降りる。 「隊長、隊長が捕らえられたとのこと副長に連絡しました。 よかったぁ、何とかギリギリ間に合いましたね。 」 「隊長!!神山は隊長をお守りできず誠に申し訳ございませんでした!!!」 ザキの声と神山の声が交互に頭にガンガン響く。 いや、遅ェし、五月蠅いし、暑苦しい。 だがこれが俺の求めていたものなのだろう。 ザキのどうでもいい報告によると意識を手放す瞬間、俺は見たことのないくらいの穏やかな顔をしていただとか。 後からバズーカで記憶は抹消させたが。 死に損なった上に大事なものまで見つけてしまった俺は手負いのところを攘夷志士に狙われないようにとの近藤さんの計らいで江戸から離れた病院にいる。 港の見える病室には時々窓からやわらかな潮風が吹きこみ、晴れた日には江戸のターミナルが小さく見える。 最近の趣味はもっぱらラジオだ。 雌豚くさい話も聞いてりゃなかなかおもしろい。 【こちらは大江戸アワー、おなじみのポップス・ラジオ・リクエストの時間でござるよ。 今日のリクエストはド・エス・カイザー3世より。 ってなんて中二病くささ全開の名前でござるかァ・・・。 さてさてカイザー様の恋するお相手は、「踏んでも踏んでも起き上がってくる。 え、これ読んでも大丈夫なの?・・・クソ女が好きですぜィ。 戻ったらお前のピーにピーをピーしてやるからな。 」・・・とのことでござる。 はっはっはっ、これはなかなか過激なリスエストでござるなァ。 】 *** 懐かしい江戸の街を早足で歩きながらあいつを探す、駄菓子屋のおばちゃんやら、街ゆく顔馴染みやらに「おかえりなさい」だの「お疲れ様」だの声を掛けられる。 排気ガスと花の香りと雑踏と混ぜこぜになったこの匂い。 探し歩いた顔はいつもの公園のベンチにいた。 後ろからそっと近づく、なんと声を掛けようか、ひたすら列車の中でシュミレートしていたというのにいざとなると思い浮かばない。 これが一つ目の初めて見る表情。 「・・・なにアルか、カイザー。 」 なんでィ、お前もラジオ聞いていたのか。 ぐいっと身体ごと引き寄せられる。 真っ青な瞳に涙が滲んでいたのは気のせいか。 これが多分二つ目に知る表情。 折角ならもっとよく見たかった。 何しろ骨が砕けるほどの力で抱き竦められているのだから。 チャイナの甘い匂い、ずっと手に入れたかった温もり。 あァ、今ならもう定春なんとか号の二の舞になってもかまわねェや。 ずっと人斬りに大切な者を持つことは許されないと自分に言い聞かせてきた。 勿論これからも近藤さんを守ることが一番だ、忠によって生き、忠によって死ぬ。 己の道に迷いはない。 だけどこうして帰ってくる場所があるというのもちっとも悪かねェもんだ。 「おかえりアル・・・総悟。 」 「たでーまでィ、神楽ちゃん。 」 リクエストが読まれたら恋が実るって噂の ポップス・ラジオ・リクエスト。 今宵も誰かの想いが叶いますように。

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[B! ラジオ] 1 番 よ く 覚 え て る ラ ジ オ ネ ー ム ぶる速

ラジオネーム恋するうさぎちゃん

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ミュージック・アワーの歌詞

ラジオネーム恋するうさぎちゃん

【 皆の衆、元気でござるかァ。 拙者は最ッ高に元気でござる~。 こちらは大江戸アワー、お馴染みのポップス・ラジオ・リクエストの時間でござるよ。 これからすンばらしい火曜日の夜に懐かしの曲、思い出の曲、思い出したくない曲まで何でもじゃんじゃんリクエストを紹介していくでござる。 隣でちっとも動かない車のハンドルを真面目に両手で握り続けるのは監察・山崎退。 城での長ったらしい会議を終え、さっさと屯所に戻って土方死ね死ね儀式でもやろうと思っていたのにこの渋滞だ。 通りにはテールランプの明かりがどこまでも赤く瞬いている。 まだしばらくは動きそうにない。 曇ったドアガラスに指で「ひ じ か た し ね」なんて書いてみる。 「おいザキ、なんでィこの番組は。 雌豚くさくてかなわねェや。 落語かけろよ落語。 」 「沖田隊長知らないんですかー?これはいま江戸で一番流行ってるラジオ番組なんですよ~、なんでもここでリクエストが採用されると恋が実るとかで!あまりに人気すぎて江戸以外の地域でも放送されてるんですよ。 僕もたまさんへの想い、リクエストしたんですからね!」 ラジオ番組なんてものに興味はない、聴くのはもっぱら落語ばかり。 それだって色恋ものは聴かない。 常に死戦に身を置く自分にとって色恋沙汰なんてものは最も必要のないものだからだ。 いつ死ぬかもわからない身なのだから、大事なものは少ないに越したことはない。 まぁ、カラクリ娘に絶賛片思い中の監察にとっては色恋沙汰も大切だろうが。 わんわん五月蝿いラジオ番組を聴き流しながら(ほとんど流れてる曲お通ちゃんだけじゃねぇか。 ) 「ひじかたしね」の「じ」の点々の辺りから窓の外を伺うと、真っ赤なチャイナ服が跳ねた。 その横には銀髪の着流し姿。 万事屋のチャイナ娘と旦那かねィ。 ぴょんぴょんと飛びあがりながら旦那の腕に飛びつこうとするチャイナは俺には一度も見せたことのない花の咲いたような笑顔を浮かべていた。 ・・・色恋なんて無様なもんでィ。 思い出すのは幼少期の苦い思い出、首元にちくちくと樹皮があたる楓の木の後ろに隠れて、そっと息を潜めながら姉上と土方の会話を盗み聞いた夜。 きっと土方コンチクショウだって己の道に大事な者を抱えることなど許されないと知っていたのだろう。 *** 大きな捕り物がない限りは公園でのリラックスタイムを一番大切にしている。 何事もオンとオフが大事ってもんでさァ。 公園のベンチでいつも通りアイマスクを付けて一眠りしていると背後からよく知った気配を感じた、殺意ではないが挑戦的なそれ、首元にガシャリと突き付けられるひんやりとした金属。 好敵手のお出ましだ。 「てめェ、昨日の夕方5丁目でうろうろしてただろィ。 」 一戦を交えた後で図々しくも隣に腰掛けた鴇色頭に声をかけると途端、かじっていた酢昆布をぺっぺっと吐き出して俺をギロリと睨みつける。 うわ、きったねぇ。 「ストーカーアルか!このクソサド野郎。 さては銀ちゃんとワタシを尾けてたネ?」 そうそう、この心から嫌で仕方がないという表情、俺に向けられるのはいつもこれでさァ。 「ストーカーとは人聞きの悪いこった。 チャイナ服着た小娘と怪しげな銀髪が道を歩いてたから職質が必要か考えてただけでィ。 」 「うるさいネ。 昨日は新八がラジオを聴かないといけない日だとか言うから銀ちゃんと二人で買い物行ってたアル。 新八がいないから重かったんだぞコノヤロー。 」 てめェは全然荷物持たずに旦那にちょっかいかけてただけじゃねーかと突っ込みたかったが、面倒なのでやめた。 へぇ、やっぱりあの恋するメガネとやらは童貞野郎だったのか。 分かり易すぎだろィ。 「あァ、あのポップス・ラジオ・リクエストとかいうくだらねぇ番組だろィ。 あんなのに好きな奴への思いを送るなんて気色悪いったらありゃしねェ。 」 「お前も知ってたアルか。 恋する人を馬鹿にするなんて最低ネ。 ワタシなんてハガキ送るために毎日文字の勉強してるアル!お前には一生わからないダローけどな。 」 それは、頭の真上からガツンと重いもので殴られたような驚きだった。 つんと鼻にぬける刺激のあと、声が掠れたりしないように必死に平静を取り繕った。 「チャイナァ・・・お前、好きな奴いたの?」 「ワタシはかぶき町の女王神楽様アルよ?好きな男の一人や二人いて当たり前アル。 まぁ、 芋侍にはわからないだろうけどナ。 お前と話してる暇なんてなかったアル、銀ちゃんと待ち合わせしてるからじゃーナ。 」 軽やかに走り去っていく背中をぼんやりと見送る、チャイナに好きな奴。 チャイナの好きな奴。 四つも下のガキだと思っていたが、好きな男の一人くらいいるものなのか、そういうものか。 気付いたらベンチの端を掴む指から薄っすら血が滲んでいた。 頭をよぎるのはあの銀髪の旦那・・・。 まあ、俺には全くもって関係のないことだ。 屯所に戻ると幹部一同集合がかかった。 急遽、大規模な攘夷浪士の動きがあったとかで伊豆の方まで遠征を行うらしい。 近藤さんは江戸を動けないために、土方か俺が遠征を率いるようにとのことだ。 「総悟、お前は江戸に残れ。 今回の遠征はどうも危険だ。 俺が行ってくるから江戸で近藤さんを守るんだ。 」 いつも自分が危険な役割を引き受けようとする気に食わないニコチンマヨ。 何時までも弟分だと思ってやがる。 余計な心配でさァ。 「いや、俺が行きますぜィ、伊豆がキナ臭いってなら尚更だ。 切り込み隊長直々に粛清してやりまさァ。 」 「総悟、お前は危なっかしいから江戸に残るんだ。 この遠征はどのくらい掛かるかもわからねぇ。 俺が伊豆には行ってくる。 」 「嫌でさァ、丁度気分転換でもしたかったんでねェ。 俺が行きやす。 」 しばらくの押し問答のち、山崎も連れていくとの条件で俺が遠征に行くことになった。 近藤さんと土方コノヤローは心配しているようだったが。 近藤さんはまだしも土方については本当に忌々しい限りだ、この遠征でもしものことがあったとしても悔いはない。 そもそも近藤さんと近藤さんの大切な真選組を守りぬくことこそが己の本望なのだから。 なぜだか脳裏には赤いチャイナ服と銀髪がちりちり浮かび上がる。 そう、自分には後ろ髪を引かれるものなどなにもないのだ。 まぁ、道中ザキでもこき使ってやるとするかねェ。 見送りでもしつこく身を案じる近藤さんと土方に背を向けて、夜明け前に伊豆へと向かった。 [newpage] 伊豆に到着してからというもの、攘夷浪士の動きは興醒めするほどになく、ひたすら敵の動きを待って潜伏する日々が続いた。 潜伏先は山奥の小屋で気晴らしになりそうなものは何もない。 こうなると退屈で退屈で仕方がない。 同じ見張りのシフトになりたがる神山を押し退けて「隊長!!この神山死ぬまで隊長にお供いたします!!!」持ち場につくと、ひたすらラジオを聴く。 不愉快なことだが変化のない日々を過ごすうちにチャイナ娘がハガキを出そうとしていたあのラジオ番組を聴くのが習慣になっていた。 潜伏5日目 今夜チャイナからのハガキは読まれるだろうか、 【大江戸アワー、今宵もポップス・ラジオ・リクエストの時間でござる。 今宵も楽しい曲、おすすめの曲、なんでもリクエストを待っているでござるよォ。 それでは最初のリクエストは、ラジオネームISAOさんから、「ケツ毛ごと愛してくれる美しいあの人へ。 愛しています!あの人というかお妙さんっ!聞いていますか!!?」とのメッセージが届いております!はははっ、これは情熱的だ。 ISAOさん頑張ってくださいね。 さてさてリクエストは・・・】 ほろりと笑みがこぼれる。 これじゃあラジオネームの意味がないじゃあないか。 あの人は今日も江戸で姐さん追いかけて元気でやっているに違いねぇや。 自分がいなくてもどうやら江戸はうまくまわっているらしい。 ひたすらアンパンを数える山崎を横目に眠りについた。 潜伏10日目 未だ攘夷浪士に動きなし。 このところ隊士の士気も下がってきている。 そして今夜もチャイナのハガキは読まれない。 【次の今夜のリクエストは、ラジオネーム公園のマダオさんから妻へのメッセージでござるよ。 「聞いているかい??再就職、こんどこそ決まりそうだよ!!」とのメッセージが届いております!マダオさん、再就職上手くいくといいですね。 さて、マダオさんのお気に入りの曲は・・・】 チャイナとよく喧嘩をした公園で段ボールに座っていたおっさんが頭に浮かぶ。 あの人は結婚していたのか。 はは、あんな様子じゃ再就職なんてできるわけねーだろ。 小声でつっこみながら、変わらない江戸の様子が目に浮かび少しだけ心が晴れた気がした。 潜伏14日目 伊豆に来てから二週間が経過した。 今日とて浪士に動きなし。 山崎にいたっては部屋の壁に向かってあんぱんスパーキングをはじめている。 【大江戸アワー、さて今夜もお待ちかねの時間でござる。 それでは今夜のリクエストは、ラジオネームマヨラサーティーンさんから、「お前はマヨネーズをかけるか?俺はデザートにだってかける!!マヨとの仲は誰にも邪魔させねぇ!」とのメッセージが届いております。 マヨネーズはカロリー高いですからね!ほどほどにね!マヨラサーティーンさん!】 マヨくさいメッセージを送りつけたのはあいつだろう。 やっぱり江戸は変わりないようだ。 近藤さんは姐さんを追いかけ、土方コノヤローはマヨ中だ。 さっさとマヨネーズに埋もれて死ね土方。 チャイナはもうハガキを出したのだろうか。 潜伏25日目 いざ討伐と、遠征に来たにも関わらず、既に何もないまま一か月近くが経過しようとしている。 いよいよ隊士の士気は下がり、江戸には何時になったら帰れるのかというぼやきもあちらこちらから聞こえるようになった。 仕方がないので隊を半分に分けて出掛けて来るように言った。 ここまで動きがないのだから自分が残ればしばらくは大丈夫だろう。 いつものように部屋の隅でラジオの時間を待つ。 ここのところずっとラジオを聞いていたがチャイナのハガキらしきものが読まれることはなく、江戸やかぶき町の知った者や知らない者からのハガキが読まれていた。 どうやら世の中には想い人を持つ者が沢山いるらしい、そしてそれぞれが結ばれることを切に願っているようだ。 チャイナ娘が旦那に送る愛のメッセージなんて露ほどにも興味はないのだが、内容を確認して江戸に戻った時には存分に馬鹿にしてやればいい。 それにしても疲れた、ここまで動きがないのだから読みが外れたんじゃないのだろうか。 浪士はおろかどうみても人っ子一人いないうえに外には見張りの隊士がいる。 一眠りするとしようかねェ。 突如、ドオッと轟音が響き、ものすごい速さで障子が吹き飛んだ、吹き飛んだのではない真っ二つに斬られた。 いつの間に囲まれていたのだろうか。 気が付くとぐるりと立ち囲む攘夷浪士達。 数は五十はいるだろうか、五十くらい何てことははないのだが、視界の隅で一番隊の隊士が数名人質に取られている様子から今無闇に斬りかかるのは得策ではないように思われた。 クソッ、一気に片づけてやりたいがここで斬りかかれば間違いなく隊士が斬られてしまう。 「おい、隊士達を全員離しな、そうすれば俺が捕まってやらァ。 」 戦わずして敵に捕らわれるのは不本意だが今はこれ以外に方法はなかろう。 「お前ら平隊士どもを解放しろ、こいつは真選組の沖田だ。 すぐに殺さずに情報を吐かせろ。 」 頭を掴まれて引き摺られ小屋の端の柱にきつく縛られると何か強い香りのものを嗅がされる。 そこで完全に意識が途切れた。 *** 気がつくとふわふわした真っ白な空間のなかにいた。 ここはどこだろう。 温かくて気持ちがいい。 チャイナが俺の横でぴょんぴょん飛び跳ねながら腕をつかんでいる。 やわらかい笑顔で頬を染めるチャイナ。 この顔だ。 そうか自分にもこんな表情を投げかけることもあるのか、胸に暖かい感情がこみあげる。 チャイナは俺の腕をつかんで楽しげなだ。 ふと違和感を感じて視線を落とすとどういうことか自分が着ているのはどこかで見たような白い着流しに流水紋の・・・。 ぎょっとして顔をあげると恨めし気な表情でこちらをじいっと見つめる、黒い隊服の、俺がいた。 *** ずきずきと鈍痛を感じて目を開くと浪士達にぐるりと囲まれていた。 左足に力が入らず上手く動かせない、どうやら気を失っている間に強く殴られたようだ。 「天才剣士沖田もここまでのようだな。 近藤について情報を吐いてもらおうか。 」 にやにやと小汚い笑みを浮かべた浪士が泥のついた足を肩にかける。 いつもなら叩き斬ってしまうところだがそれも敵わない。 嗅がされた薬が効いているのか四肢に力が入らないのだ。 「だんまりか、ツラをよぉく見ればまだまだ子供じゃないか、いいか、近藤について話せばお前は解放してやる。 痛い思いをしたくなければ話すんだ。 」 「上等でィ。 俺は話さねェ。 」 なんとか笑みを浮かべると、体格のいい男たちが間髪を入れず身体を殴りつけてくる。 じりじりとした痛みが続く。 薄くなる意識の中で思い出すのはやっぱりあのチャイナ娘、今頃も旦那と楽しくやっているのだろうか。 江戸は自分がいなくても変わらずにまわっていた。 近藤さんも、真選組もかぶき町の住人もみんなそうだ。 もはやここで死ねるのならばそれこそ本望ではないだろうか、出来れば最期まで刀を振るっていたかったが。 とびとびになる意識の中で、血の匂いと蹴りつける音だけが響く。 その時、重苦しい雰囲気と不釣り合いなメロディがどこからか聞こえてきた。 【みなのものォ!元気でござるかァ!お待ちかねの大江戸アワー、ポップス・ラジオ・リクエストの時間でござるよ。 今夜最初のリクエストは、かぶき町にお住まいのラジオネーム恋するうさぎちゃんからのお便りでござる。 】 そういえば隣の部屋にラジオを置きっぱなしだったのか。 殴られた拍子に鎖骨が折れたのか首回りがじんじんと痛む、抵抗しようにも力が出ない、いや、もはや抵抗しようとすら思えないのだ。 【うさぎちゃんの想い人は、えーっとクソ、サド、ヤロー、クソサドヤローさんとのことです。 「いつも素直になれないけれど、江戸を守る大きな背中が大好きです。 最近見ないから心配しています。 お前をやるのはわたしだから早く帰ってこいよ。 」とのことです。 いやァ、これは今流行りのケンカップルってやつでしょうか。 お熱いですねェ。 それはあいつだけが呼ぶ俺の呼び名。 早く帰ってこいよ、そう言っていた。 ようやく届いた。 あのチャイナがハガキを書いてまで伝えてきた想い。 「生きたい」「帰りたい」という思いがふつふつと湧き出す。 もう一度あの笑顔が見たい。 こんどは笑いかけてくれるのか。 チャイナ、近藤さん、土方コノヤローに真選組の隊士達、旦那にメガネ、姐さん、江戸の見知った顔達。 あァ、もしかしたらずっと誰かからのこの言葉を待っていたのかもしれない。 近藤さんにも土方コノヤローにもそう言われたかったのかもしれない。 ここに来てからずっと誰かに帰りを待っていて欲しかったんだ。 肩にかかる男の足首をぐぐっと勢いよく引き込み、反対側の壁に向かって素早く投げつける。 骨が砕ける音。 慌てて飛びかかってくる者を右足と腕だけで弾き飛ばしていく。 「どうやら俺には江戸に待たせてるやつがいるようなんでねィ。 ここでおっ死ぬわけにはいかねェ」 「沖田総悟、参る。 」 突然のことに騒めき惑う声を聞き、外から慌てて部屋に飛び込んでくる浪士たち。 何人であろうが決してやられるわけにはいかない。 斬りかかろうとする浪士を打ち飛ばし刀で腰の縄を解くと、地面を蹴り上げ素早く間合いを詰める。 飛び掛かって来た者は一太刀で絶命したらしい。 ぶつかり飛び散る血の匂いと刀の擦れる音。 片足が思うように動かないのが不思議なほどに身体は自由だった。 右、左、後ろ、次は斜め、向かい来る浪士たち。 骨を割り、刀を一心に払う。 一体どれだけの時間刀を振るい斬り続けたか。 辺りが見渡す限りの真っ赤に染まっても一向に数は減らない。 左腕が鈍く痛む。 薬が入っていることもあり常と同じようには素早く反応が出来なくなって来た。 刹那、敵の切っ先が鼻先を掠め、世界がスローモーションのようにゆっくり動く、右腕に向けて振り下ろされる刀、あわや効き腕を取られるかと身構えた時、背後から風よりも素早く切りつける音、崩れ落ちる浪士。 「おい総悟!・・・大丈夫か?」 低い声、鋭い刀捌き、やっぱりアンタか。 振り向くと土方が刀を振るっていた。 「ザキ、総悟を連れてすぐに撤退しろ。 残りは俺が抑える。 」 慌てて駆け寄るザキと神山に連れられて山を降りる。 「隊長、隊長が捕らえられたとのこと副長に連絡しました。 よかったぁ、何とかギリギリ間に合いましたね。 」 「隊長!!神山は隊長をお守りできず誠に申し訳ございませんでした!!!」 ザキの声と神山の声が交互に頭にガンガン響く。 いや、遅ェし、五月蠅いし、暑苦しい。 だがこれが俺の求めていたものなのだろう。 ザキのどうでもいい報告によると意識を手放す瞬間、俺は見たことのないくらいの穏やかな顔をしていただとか。 後からバズーカで記憶は抹消させたが。 死に損なった上に大事なものまで見つけてしまった俺は手負いのところを攘夷志士に狙われないようにとの近藤さんの計らいで江戸から離れた病院にいる。 港の見える病室には時々窓からやわらかな潮風が吹きこみ、晴れた日には江戸のターミナルが小さく見える。 最近の趣味はもっぱらラジオだ。 雌豚くさい話も聞いてりゃなかなかおもしろい。 【こちらは大江戸アワー、おなじみのポップス・ラジオ・リクエストの時間でござるよ。 今日のリクエストはド・エス・カイザー3世より。 ってなんて中二病くささ全開の名前でござるかァ・・・。 さてさてカイザー様の恋するお相手は、「踏んでも踏んでも起き上がってくる。 え、これ読んでも大丈夫なの?・・・クソ女が好きですぜィ。 戻ったらお前のピーにピーをピーしてやるからな。 」・・・とのことでござる。 はっはっはっ、これはなかなか過激なリスエストでござるなァ。 】 *** 懐かしい江戸の街を早足で歩きながらあいつを探す、駄菓子屋のおばちゃんやら、街ゆく顔馴染みやらに「おかえりなさい」だの「お疲れ様」だの声を掛けられる。 排気ガスと花の香りと雑踏と混ぜこぜになったこの匂い。 探し歩いた顔はいつもの公園のベンチにいた。 後ろからそっと近づく、なんと声を掛けようか、ひたすら列車の中でシュミレートしていたというのにいざとなると思い浮かばない。 これが一つ目の初めて見る表情。 「・・・なにアルか、カイザー。 」 なんでィ、お前もラジオ聞いていたのか。 ぐいっと身体ごと引き寄せられる。 真っ青な瞳に涙が滲んでいたのは気のせいか。 これが多分二つ目に知る表情。 折角ならもっとよく見たかった。 何しろ骨が砕けるほどの力で抱き竦められているのだから。 チャイナの甘い匂い、ずっと手に入れたかった温もり。 あァ、今ならもう定春なんとか号の二の舞になってもかまわねェや。 ずっと人斬りに大切な者を持つことは許されないと自分に言い聞かせてきた。 勿論これからも近藤さんを守ることが一番だ、忠によって生き、忠によって死ぬ。 己の道に迷いはない。 だけどこうして帰ってくる場所があるというのもちっとも悪かねェもんだ。 「おかえりアル・・・総悟。 」 「たでーまでィ、神楽ちゃん。 」 リクエストが読まれたら恋が実るって噂の ポップス・ラジオ・リクエスト。 今宵も誰かの想いが叶いますように。

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