二乃の勧誘。 五等分の花嫁(2)

一撃で決めるセールス電話、迷惑電話の撃退法 ~電話の向こうは何が怖い?

二乃の勧誘

『白太先輩と学校で話せないのは辛いです……』 『我慢してくれ。 青木みたいな可愛い子と学校では話しづらいからな』 『そうですか。 我慢は辛いものです』 『土曜日には会えるから。 それまで我慢してくれ』 そんなLINEのやりとりを俺は文芸部の部室で行なっている。 部室にはもちろん……。 「白太くん、私的にはやっぱりこのキャラクターが受けの方が良いと思うのだけれど」 そう話しかけて来たのは俺を盛大に振った緑彩先輩だ。 そうですね、と素っ気なく相槌を打ちその話を受け流す。 俺は緑彩先輩に振られてから、緑彩先輩に対する態度をある程度冷たくしている。 それは俺をこっ酷く振った先輩に対する仕返しでもあり、青木を好きになるためでもあった。 俺たちが所属している文芸部は小説を書いたり詩を書いたりしているわけではない。 「 紅梨 ( あかり )はどう思う? 」 「はい。 私もそう思います」 緑彩先輩の意見に賛同したのは俺たちと同い年の 赤松紅梨 ( あかまつあかり )。 紅梨はザ、文芸少女といった雰囲気で、ショートカットで目は前髪で隠れており、シャツの上からブレザーを羽織っている物静かな女の子だ。 文芸部のメンバーは緑彩先輩、俺、玄人、そして紅梨の4人。 このメンバーでなんとか部活動を続けている。 1つの部には部員が4人いないと成立しないという規則があるため、今年なんとしても新入生を勧誘する必要があるのだ。 そして俺たちは校舎から校門に続くまでの道で新入生を勧誘するべく、他の部活の生徒が立ち並ぶ道をかき分けて進んでいく。 「よし、良いポジションに来たわ」 「ここなら新入生を勧誘しやすそうです。 それより緑彩先輩、その背中に背負っている大きな鞄は? 」 緑彩先輩に対していくら冷たく当たっているとは言え、緑彩先輩が背負っていた大きな荷物が気になった。 「よくぞ聞いてくれたわ。 それじゃあ白太くん、今からこれを着なさい」 そう言って緑彩先輩が鞄から取り出したのは猫の着ぐるみだ。 「私の見立て通りね。 よく似合ってるわ」 「いや、見立て通りも何も着ぐるみなんて誰が着ても一緒じゃないですか」 「白太くんだから似合ってるのよ」 「これ来て勧誘する必要あります? 文芸部目当てではなく、緑彩先輩を一目みようとする新入生達が。 まあ俺としては散々貶された容姿を隠せる着ぐるみを着れるのは嫌なことでは無い。 そして入学式を終えた新入生がゾロゾロと校舎から校門までの道を歩いていく。 しばらく勧誘を続けるが、やはり俺たちの周りに集まってくるのは緑彩先輩を目当てにした男たちばかり。 その上、その男たちは少し緑彩先輩と会話をするとすぐ別の部活の勧誘へ行ってしまう。 どうしたもんか……。 俺は声が聞こえた方向を振り向く。 そこには俺の彼女、青木蒼乃がいた。

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チカコ・リー事件!?蝶乃舞さんがシェアを希望 | 宮本ローラの「レッツ・アフィリエイト☆」

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二〇九六年四月十三日金曜日、放課後。 十三日の金曜日という迷信はこの時代にも生きており、第一高校の生徒数人も良からぬ事が起こるのではと警戒していた。 紅葉もその中の一人で、新入部員勧誘週間初日の昨日だけで彼が仲裁に入ったのは三件。 七宝との仲裁後に、二件の仲裁が入っていた。 一件は執行部一年生と風紀委員一年生で、理由は七宝の時と同じ。 そしてもう一件は、また七宝だった。 しかもまったく同じ理由での衝突だった。 そんな事が昨日だけで三件(内二件は七宝)あったので、今日はもっと酷くなるのではと警戒を最大に引き上げていた。 そんな紅葉の心情など知らないあずさは「今年は平和ですねえ」と呟いた時、五十理と二年生役員は揃って聞こえないフリをしている横で、紅葉だけ「嘘つけ」と小さく呟き返していた。 「また七宝にジュース一本」 紅葉が最大限に引き上げた警戒心が功を奏したのか、軽口を言う少ない余裕はあったようだ。 彼は巡回ルートにそって、たまたまロボ研のガレージ近くを歩いていた。 その時ガレージに人集りを発見し、中から聞いた事のある大声が聞こえてしまった。 そこに泉美から不運よく、ロボ研のガレージで執行部と風紀委員が口論しているとの報告が入ってしまったのだ。 『賭事はしません』 「いや、付き合えよ。 もう聞き飽きた声が聞こえるんだからよ」 昨日、二回対面して嫌というほど耳にした声がガレージの外にまで聞こえていた。 それは泉美にもインカム越しに聞こえていたので、賭けるとしたら誰などわかりきっていた。 『それ勝利者いませんよね?』 「……行ってくる」 泉美の正論に肯定も否定もせず、うなだれてガレージの中へと入っていく。 そして、口論している人物を見て心労がマッハで最大値へと達した。 口論している一方は、予想通り執行部一年の七宝琢磨。 その近くにいる執行部二年の十三束が頑張って口論を止めようとしていた。 『香澄ちゃん?』 そしてもう一方は、泉美の言う通り自身の双子の姉、七草香澄だった。 それは紅葉にとって一番衝突してほしくない、一番面倒な組み合わせ。 七宝と七草の確執は数字付きともなれば知らないわけではない。 「紅葉」 紅葉は見て見ぬ振りをして立ち去ってやろうかと考えたが、知っている声に呼びかけられ足を止めるしかなかった。 「達也先輩」 紅葉を呼び止めたのは、ロボ研と自走二輪部のトラブルで駆けつけていた達也だった。 隣には当然のように深雪が控えている。 「えっと、これは?」 七宝と香澄がいまだに口論を続けているのだから、達也達がまだなにもしていないのはわかっていた。 だが紅葉としては、あの口論している状況が昨日とは少し違う理由からだろうと思っていたかった。 「俺と深雪はロボ研と自走二輪部のトラブルで来たんだが、先に来ていた執行部が後から来た風紀委員に引き継ぎを拒否して、言い合いになったようだ」 「ああ、やっぱり」 その思いは数瞬で無駄となった。 予想通り、トラブルそっちのけで自分達が口論しているという、昨日とまったく同じ状況だったようだ。 「学習しねーな、本当に」 「紅葉、あっちを頼めるか?」 「ですよねー」 トラブルそっちのけなのだ。 本当のトラブルであるロボ研と自走二輪部の問題はまだ解決していない事になる。 その解決は達也達がやるから、口論の方は任せたと言われていた。 そうなるとわかっていた紅葉は、異を唱える事なく行動に移った。 『阿僧祇さん?』 しかし、紅葉はすぐに口論のもとには向かわなかった。 ガレージにある鉄くずなどが乱雑に置かれている所に向かっていたので、インカムに付いているカメラ越しに見ていた泉美は首を傾げていた。 「これが手頃か」 手に取ったのは鉄板二つ。 それをそれぞれ片手に持って口論しているもとへと近づく。 「あ、阿僧祇?! すまない、また……?」 口論している二人の近くで宥めるのを半ば諦めていた十三束が紅葉の接近に気づいたが、紅葉の静かにとジェスチャーをしてきたので黙って道を譲った。 『あの、阿僧祇さん、まさか?』 泉美の言葉を無視して、紅葉はそのままヒートアップしている二人の横の真ん中で止まり、無駄な動作なく持っていた鉄板を振り上げ 「黙ってろ!」 言葉と共に振り落とした。 「ふぎゅ?!」 「がっ?!」 鉄板は見事にそれぞれの頭にクリティカルヒットし、ダメージを負った二人は頭を抱えてしゃがみ込んでしまった。 そんな二人を無視して紅葉は、うわぁという顔をしている十三束に顔を向ける。 「十三束先輩。 これ以上、七宝が問題を起こすようならば、巡回から外すように要請します」 紅葉がしたのは仲裁ではなく、七宝に対しての厳重注意。 七宝と香澄の口論の理由は、執行部と風紀委員という枠を越えていた。 その理由は七宝と七草からくる確執からの売り言葉に買い言葉。 そんな理由の口論を紅葉は仲裁する気はなかった。 それに、七宝が関わった風紀委員との衝突は三度目になる。 同じ事を起こされるのはこれ以上、寛容できないと思っていた。 「っ、すまない。 しかし七宝に悪気はないんだ」 「でしたら改善してください。 四度目はありませんよ。 あと、ロボ研と自走二輪部の問題は生徒会が預かります。 執行部は巡回に戻ってください」 その眼光は剣を突き刺した様な鋭さで、十三束を従わせる程の力がこもっていた。 「わ、かりました。 巡回に戻ります」 いまだに頭を抱え涙目の七宝の腕を取り、十三束はガレージを出て行こうとする。 しかし、七宝が少しだけ抗った。 「あそうぎぃ」 憎しみのこもった強い睨み。 怒りの雰囲気も合わさり、人によってはたじろいでしまうだろう。 しかし、紅葉の意識はすでに七宝から外れていた為、なんのダメージも負わなかった。 「おまえっ」 「行くぞ、七宝!」 さらに言葉を重ねようとしたが、これ以上問題を起こされたら庇いきれないと思ったのか、十三束が強引に腕を引っ張ってガレージを出て行ってしまった。 「おーい香澄、大丈夫か?」 そんな十三束達がガレージを出て行くのを横目で確認してから、もう一方の頭を抱えてしゃがみ込んでいる方に声をかけた。 「阿僧祇、いきなり何すんのよ!」 香澄はバッと立ち上がり、悪びれもせず聞いてくる紅葉の胸倉を掴んで抗議する。 しかし、身長差があるためか胸倉を掴むという行為はさして意味がなかった。 「トラブルすっぽかして揉めてる奴らを止めただけだ」 「それでも他にやりようがあったでしょ!」 「いや、まぁ、お前はわからなかったが、七宝はもう俺の言う事なんざ聞き入れようともしないだろうからな。 ああいう手段になったのは仕方がないんだよ」 紅葉が七宝の頭に鉄板を落としたのは何も嫌がらせのためではなく、もう言葉では止まらないだろうと思っていたからだった。 昨日、七宝が風紀委員と二度目の衝突を起こした時、最初の時と同じように介入した紅葉だったが、それに七宝が反発。 宥める事に時間がかかり、話をまとめるのに最初よりも時間がかかってしまった経緯があった。 その事からこの場でも普通に入っては時間がかかると思った為、先に七宝を物理的に黙らして、十三束に話を付けるのが早いと判断しての行動だった。 「だからって、ボクにもやることないでしょ!」 その上で香澄にも同じ事をしたのは、七宝が「なんで俺だけ」と突っかかってこない為の用心、要は成り行きの犠牲だった。 しかしそんなことを言って、火に油を注ぐ真似をする気はない紅葉は、適当にお詫びで誤魔化す事にした。 「悪かったって。 ジュース一本奢ってやるよ」 「B定食の食券一枚」 しかし意図的に誤魔化されているのがわかったのか、香澄は要求をランクアップさせてきた。 「……激マズジュースね。 了解、さあ行こうか」 そんな香澄の言葉を聞かなかった事にして、紅葉は外へと歩き始める。 「ちょ、B定食食券二枚じゃないと許さないから!」 「さらっと増やしてんじゃねーよ」 香澄はさっさと歩いていく紅葉の隣に付いて、共にガレージを後にした。 そして、十三日の金曜日はまだ終わらなかった。

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一撃で決めるセールス電話、迷惑電話の撃退法 ~電話の向こうは何が怖い?

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『白太先輩と学校で話せないのは辛いです……』 『我慢してくれ。 青木みたいな可愛い子と学校では話しづらいからな』 『そうですか。 我慢は辛いものです』 『土曜日には会えるから。 それまで我慢してくれ』 そんなLINEのやりとりを俺は文芸部の部室で行なっている。 部室にはもちろん……。 「白太くん、私的にはやっぱりこのキャラクターが受けの方が良いと思うのだけれど」 そう話しかけて来たのは俺を盛大に振った緑彩先輩だ。 そうですね、と素っ気なく相槌を打ちその話を受け流す。 俺は緑彩先輩に振られてから、緑彩先輩に対する態度をある程度冷たくしている。 それは俺をこっ酷く振った先輩に対する仕返しでもあり、青木を好きになるためでもあった。 俺たちが所属している文芸部は小説を書いたり詩を書いたりしているわけではない。 「 紅梨 ( あかり )はどう思う? 」 「はい。 私もそう思います」 緑彩先輩の意見に賛同したのは俺たちと同い年の 赤松紅梨 ( あかまつあかり )。 紅梨はザ、文芸少女といった雰囲気で、ショートカットで目は前髪で隠れており、シャツの上からブレザーを羽織っている物静かな女の子だ。 文芸部のメンバーは緑彩先輩、俺、玄人、そして紅梨の4人。 このメンバーでなんとか部活動を続けている。 1つの部には部員が4人いないと成立しないという規則があるため、今年なんとしても新入生を勧誘する必要があるのだ。 そして俺たちは校舎から校門に続くまでの道で新入生を勧誘するべく、他の部活の生徒が立ち並ぶ道をかき分けて進んでいく。 「よし、良いポジションに来たわ」 「ここなら新入生を勧誘しやすそうです。 それより緑彩先輩、その背中に背負っている大きな鞄は? 」 緑彩先輩に対していくら冷たく当たっているとは言え、緑彩先輩が背負っていた大きな荷物が気になった。 「よくぞ聞いてくれたわ。 それじゃあ白太くん、今からこれを着なさい」 そう言って緑彩先輩が鞄から取り出したのは猫の着ぐるみだ。 「私の見立て通りね。 よく似合ってるわ」 「いや、見立て通りも何も着ぐるみなんて誰が着ても一緒じゃないですか」 「白太くんだから似合ってるのよ」 「これ来て勧誘する必要あります? 文芸部目当てではなく、緑彩先輩を一目みようとする新入生達が。 まあ俺としては散々貶された容姿を隠せる着ぐるみを着れるのは嫌なことでは無い。 そして入学式を終えた新入生がゾロゾロと校舎から校門までの道を歩いていく。 しばらく勧誘を続けるが、やはり俺たちの周りに集まってくるのは緑彩先輩を目当てにした男たちばかり。 その上、その男たちは少し緑彩先輩と会話をするとすぐ別の部活の勧誘へ行ってしまう。 どうしたもんか……。 俺は声が聞こえた方向を振り向く。 そこには俺の彼女、青木蒼乃がいた。

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