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次の前のお話『「ありがとう」と伝えたい』の後日談です。 またまたやらかす義勇さん。 余談ですが、妖怪ウォッチシャドウサイドにハマってます。 シャドウサイドは戦いやシリアス多目で子供っぽい~と偏見を持ってるひとにはぜひ見て欲しいっす。 展開も胸アツです!でもアニメから観るとあまり分からないかも。 映画『妖怪ウォッチシャドウサイド鬼王の復活』を初めに是非見てみて下さい……!!dTVで配信中です。 これからも皆様の「これが見たかった!」を叶えていきたいです!• 「うまい!うまい!うまい!」 「伊黒さん!これ凄い美味しいの!」 「良かったな、甘露寺」 「おらおら、派手に呑め冨岡!!」 血鬼術にかかり、耳が聞こえなくなった冨岡をお世話してくれた柱達の恩返しに、と開いた宴会。 其処では皆喋り、食べ、そして呑んでいた。 宇髄はもう何杯も呑んでるのにほろ酔い程度だし、時透はもう疲れて寝てしまった。 煉獄はただうまいうまいしていた。 「……………っぷは」 「ほらほら、とみおかはもっとのめのめ~!」 「いや、もうこれ以上は流石に酔って…」 「いーんだよ!今日位は!」 「そうですよ~冨岡さん!」 「おい、あんま呑ませ過ぎんなよォ」 胡蝶もどこか上機嫌だ。 まあ、今日だけなら……… 酒を一気に飲み干すと、カアッと体が熱くなり、頭がぷかぷかと…ういているような……かんかくがした……。 「……ほ…………」 冨岡の目は少し潤み、顔が赤くなっている。 「冨岡の酔った顔なんて見たことねーからなー!さてさて、泣き上戸か、怒り上戸か……?」 冨岡がゆらりと顔を上げた。 「………ん~………ふふふ、お酒、やっぱり美味しいねぇ、ね?」 「!!!!!」 柱達に沈黙が走り、時透の寝息だけが聞こえた。 「冨岡…………………?だよな……………??」 「冨岡さん………ですよね??えっ、何で??」 宇髄もすっかり酔いが覚め、不死川はフリーズしている。 どうやら冨岡は酒を呑みすぎると笑い上戸…というか、もはや二重人格のような……子供っぽい性格になるらしい。 だが、被害はそれだけでなかった。 「こちょう~~」 「!!??!?」 突然冨岡が胡蝶の頭を撫でだした。 「こちょう…、………しのぶは偉いよねぇ。 いつもいつも、疲れてるのに、みんなの手当てしてさ………おれのあこがれだよ!」 「な……………っ……!!」 胡蝶の顔が真っ赤に染まった。 「さねみ~!」 「オウ」 「さねみはねぇ、すごく強くて、おになんかすぐたおせるわざが、本当にかっこいいね、ねぇ?」 「オウ」 「いつかおれも、さねみみたいになりたいなぁ……………」 「オウ」 不死川はまだ読み込み中だ。 「うずいはさぁ、筋肉むきむきで、きっと助けたひと全員安心できるよね、ひめじまさんも…………」 「おっ、おう、ありがとよ」 「冨岡………お前も……上へいけば必ずもっと強くなれる…」 「ほんと?ほんとに??」 「ああ」 「………………そっかぁ…………!」 んふー、と冨岡が満足そうに笑った。 「かんろじも、いつもごはん誘ってくれてありがとうね!でもね、いつも任務とかぶっちゃうんだ…………ごめんなさい」 「いい、いや大丈夫よ!!全然!!今度全員で行こうね!!」 「うん!」 「冨岡…もう寝ろ。 甘露寺も迷惑がって…」 「いぐろはね、えっと…いつも俺のこと気にかけてくれるよね、本当にありがと……」 「!?いや、あれはその」 「俺、ちゃんとした柱になれるように、がんばるね」 「…」 冨岡が優しく笑うと、伊黒は少し頬を染めそっぽ向いた。 なんということだ。 あっという間に冨岡は本心をさらけ出し、急速に柱の皆と仲良くなり始めたではないか。 まあ実のところ、冨岡は過去の出来事以来喋ることが殆ど無くなり、口下手になり、その後の竈門兄妹の騒動で語彙力を使い果たしたのだ。 だから、お酒で酔った冨岡はなんて親しみやすいのだろう。 時透とまだ固まっている不死川以外は和んでいた。 「よもや!!冨岡はお酒を呑むと弟のようになるのだな!!」 「んー?おれ、おとうとだよ?」 「なんと!!お兄様がいるのか!?」 「んーん。 ねぇさん。 姉さんが、いたの」 「冨岡さんのお姉様……?」 胡蝶が首を傾げた。 「うん。 鬼に、喰われて」 『!』 冨岡の姉は、とても幸せな日になるであろう、祝言の、前日に……… 「凄い辛くて、辛くてね、心の病気って言われて、親戚の所連れていかれそうになったけど、逃げた」 俺が逃げてなかったら今の皆には会えなかったんだよ、と冨岡は皆を見て微笑んだ。 「そのあと…………鱗滝さんに拾われて、錆兎に会って…………最終、選別で…………」 ぽて、と冨岡は近くにいた不死川にもたれ掛かった。 そして、静かに寝息を立て始めた。 「………………」 なんとも言えない雰囲気になり、気付けば三時を回っていたので水屋敷に全員泊まることにした。 それぞれ羽織を枕に雑魚寝した。 「たまには冨岡に酒呑ませっかな~、あの冨岡面白かったし」 宇髄が髪を解き、額当てを取りながら呟いた。 「やめてください…毎回あれになったら私色々持ちませんので」 悲鳴嶼が電気を消した。 不死川は、懐で眠る冨岡を見つめながら弟達の事を思い出していた。 [newpage] 温かい…………たしか俺は、宇髄に酒を飲まされて………ならば雑魚寝で寝ているはず。 でも、温かい。 布団の温かさじゃない…… もぞ、と冨岡が身体を起こした。 見渡せば他の柱達も雑魚寝していて、そのほとんどが冨岡を抱えるように、温めるように眠っていた。 冨岡は、ガンガン痛む頭を抱え過去を思い出していた…………。 『義勇……次から間違えて酒を呑まぬように。 』 『はい、鱗滝さん…』 『義勇の世話、大変だったんだぞ。 表情筋を柔らかくしようと決心した冨岡だった。 おしまい.
次のの続き。 捏造最終決戦で死んだ義勇さんが、冨岡義勇が存在しない過去の時間軸に逆行トリップし、しくしく泣きながらワンチャン目指す話。 いつにもまして捏造乱舞です。 錆兎と真菰の生家、生い立ち、水の呼吸一門の兄弟弟子、捏造してます。 半分くらい真菰視点です。 救えるものもあれば、取り零すものもあるということで、ちょっと後味悪いかもです。 2頁目に蛇足として軽く人物紹介みたいなの入れました。 読まなくてもたぶん問題ないです。 ついに原作全巻購入して、読むんだ……! 今から楽しみで、楽しみで! ただ一つ懸念は、原作読んだら二次創作書けなくなるかも、という。 頭が固いから原作にこだわってしまって、いつも書けなくなるパターン…… 続き全然出なかったら、察してください…… でも、まだ書きたいネタあるので、大丈夫だと信じてる!• 鬱蒼と繁る森のなか、木々の葉が重なり濃い影が落ちる。 暗闇のなかに義勇は居た。 僅かにさす月の光りが、義勇の藍の瞳を照らし青く揺らめいた。 枝葉の天蓋には二対の赤い星が閃く。 風が葉を撫ぜる音が義勇を越えていく。 風の音に追随するように瞬く間に赤い星が増えていく。 青い星のような光を宿した瞳が赤い無数の星を見つめて、一拍、天上の月を雲が覆い隠した。 月の光の途絶えた地上は暗く、伸ばした腕の先さえ見えない。 暗闇の中、未だ煌々と光る赤い星が殊更不吉に煌めいたかと思えば、地上に立つ義勇に向かって降り注ぐ。 凪によって頸を斬られた鬼たちが赤い目を見開きながら、黒い灰にかわり風に散らされて消えて逝く。 風に飛ばされた黒い灰の一片を何気なく目で追い、空を見上げた義勇の瞳には一際うつくしい真円の月がうつった。 「……錆兎」 月に兎の陰をみる。 夕暮れが海に繋がる川を橙色に染める。 夕方の川沿いの道は帰路を辿る人々の姿があり、賑やかだ。 ただひとり帰る場所のない義勇だけがぼんやりと道の端に立ち尽くし、色が変わっていく光景を見つめている。 「……さびと」 夕陽の鮮やかな色に錆兎を思い、涙がじんわりと眦を濡らしこぼれそうになった瞬間、義勇は後ろからの衝撃で川へと落下した。 派手な水飛沫を上げて川の浅瀬へと落ちた義勇は半分水に浸かりながら、茫然と元いた道を見上げた。 義勇にぶつかった子供が、焦った様子で川岸へと降りてくるのが見えた。 夕暮れの空と同じ色をした宍色の髪を揺らしながら、心配そうに下がった眉と藤色の瞳の少年が駆け降りてくる。 懐かしいその姿に息をのむ。 濡れた髪から滴る水が冷たく、頬を滴る水滴だけがやけに熱かった。 目の前に差し出された手の温もり、それはとても懐かしいもので。 川に落ちてずぶ濡れな上に、ぼろぼろと涙を流す義勇の手をひいて錆兎は自分の家へと連れ帰った。 昔、よく泣く義勇を錆兎は手をひいて鱗滝さんの家まで連れて帰ってくれた。 その時と同じように手をひかれ歩いていると、今まで我慢していた分の涙もあふれて止まらなかった。 錆兎の家は立派な侍屋敷で、廃刀令が出た今は剣術の道場をしているようだった。 門をくぐった所で遭遇した錆兎の父は、錆兎に事情を聞くと錆兎の頭に拳骨を落とし、義勇に向かって折り目正しく頭を下げた。 錆兎と良く似た髪質の寡黙ながら、優しい目をした男性だった。 錆兎は義勇を湯殿へ入れ、着物を着せ、濡れた衣服を外に干し、義勇の髪を櫛けずり手拭いでふき、温かいお茶を飲ませ、まるで弟にするように甲斐甲斐しく世話をした。 義勇は手のなかの湯のみをもてあそびながら、落ち着かなげに座り直す。 甲斐甲斐しく世話をされながら、義勇の頭の中は慕わしい兄弟弟子の姿に懐かしさに嬉しさと、どう接したら良いのかという戸惑いでいっぱいだった。 視線をさ迷わせた縁側の向こうには、質素ながら綺麗に整えられた庭が薄闇に沈んでいる。 「もう暗いので、今日は泊まっていってくださいませ」 今、錆兎がお部屋の用意をしておりますので、と上品に微笑んだ錆兎の母は、錆兎と同じ宍色の綺麗な髪をしていた。 突然息子が連れてきたずぶ濡れで号泣している男にも動じず、湯殿と着物の用意をし、錆兎に指示を出す凛とした女性だった。 錆兎は父にも、母にも良く似ている。 両親に愛されて錆兎は幸せに暮らしているのだと思うと胸の奥がほわほわと熱くなる。 「冨岡様、母上、失礼致します。 お部屋の用意が整いました!」 綺麗な姿勢で正座した錆兎は凛としていながら、弾んだ声で声をかけてきた。 その瞳は無邪気に輝き、頬は興奮で桃色に染まっている。 「……あの不躾ですが、冨岡様、おれ、いや、わたしに剣の稽古をつけてはいただけませんか!」 「それは……」 「父上が身のこなしから冨岡様はかなりの実力者では、と言っていました!是非、稽古をつけていただきたいです!!」 「……俺は、強くない」 一緒に修行をしていた時から錆兎は、これと決めたら絶対に譲らない男だった。 そんな錆兎の気性を義勇は慕わしく感じていたものだが、それは幼い時分から変わらないようだ。 結局、錆兎の熱意に負け道場で木刀を手に向かい合っている。 打ち込んでくる錆兎の剣をさばく。 その太刀筋はまっすぐで、まだ拙いもののきっとすぐに以前のように強くなるだろう。 「冨岡様、」 「義勇だ。 義勇と呼んでくれないか」 (昔みたいに) 「そんな、目上の方を呼び捨てになんかできません!」 錆兎の言葉に、めうえと小さく呟く。 昔は同じだった。 木刀を握る手の小ささも、こちらを見上げる目線も、ほとんど同じ位置にあったのに。 今はどうだろうか。 義勇の手は大人の手だ。 刀を握るために皮が厚く、骨張った、小さな傷もある大きな手だ。 あの頃から背も伸びた。 錆兎の目線は随分下にある。 錆兎はいつも義勇より大きく頼もしく見えたのに。 今は錆兎はまだ子どもで、義勇は大人だった。 もう、錆兎と一緒に成長できない。 もう、錆兎と背を比べられない。 もう、錆兎と一緒に競争できない。 もう、まえには戻れないのだと、急速に頭が冷えた。 温度を失っていく頭とは逆に、目元がじんと熱くなり、ぼろりと大粒の涙がこぼれた。 「そ、そんな、泣くほどか!?ああ、泣かないでください、そんな子どもみたいに……」 錆兎の手が涙に濡れる義勇の頬をぬぐう。 ぬぐったあとから、ぼたぼたとこぼれる涙に錆兎は眉を下げて困ったように笑う。 「困ったひとだ……、大人の男であんなに剣が強いのに、こんな風に泣かれたら、まるで弟みたいに思ってしまうだろう」 「ふ、ぅ、弟で、い、いから、義勇と呼んで、くれ」 錆兎が義勇の頭に手を回し、己の肩口に引き寄せた。 肩に顔を押し付け嗚咽をもらす義勇の頭を優しく撫でながら、錆兎は目を細めた。 「ずいぶん、大きな弟だなあ。 」 軽やかな声をあげて笑った錆兎は、錆兎の背にすがるように手を回した義勇を抱きしめ、囁くように義勇の名を呼んだ。 私たち鱗滝さんが大好きなんだ 木に叩きつけられた衝撃で、息がつまる。 ぶつけた背中が痛い。 息を吐き出した口から血が垂れる。 息をしなきゃ、呼吸を。 吸って、吐いて、はやく、はやくはやくはやく。 立ち上がって地面を蹴る。 足がもつれる。 飛んできた鬼の手に小突かれて、吹き飛ばされた。 遊ばれているのがわかって、さらに頭に血がのぼる。 鬼の嘲笑が頭の中をぐるぐる回って、憤怒と焦燥でいつぱいになって呼吸が乱れる。 冷静にならないといけないのに、鬼の言葉がずっと頭の中で繰り返し、繰り返し響いて、 『かわいい、かわいい、おれのきつねぇ』 鬼の声が聞こえる。 『鱗滝の弟子は全員喰ってやるって決めてるんだぁ』 鬼の笑い声が聞こえる 『もう11人喰った、おまえで12人めだぁ』 ……11、人 真菰はまだ物心がついたばかりの幼子の頃に鱗滝さんの所にやってきた。 幼すぎたためか、両親や家族のことをあまり覚えていない。 ただ鬼がやってきたあの夜、神主の父と母が小さな社に真菰を隠した時強く抱きしめてくれたぬくもりだけは今も確かに覚えている。 『真菰、なにが起ころうとあなたを愛しているわ。 』 『ここに居れば神様がおまえを守ってくれる。 声を出さない、ここから出てはいけない、約束だ』 『生きて、真菰』 そう言って閉じられた障子から透ける月光の青白い光が綺麗だった。 静かな夜だった。 境内の静謐な空気を引き裂くように不躾な哄笑が轟く。 ぞわりと寒くも無いのに鳥肌がたつ、訳もわからないのに本能がおぞましいものだと、悟った。 全身がガタガタと震えた。 外にいるはずの両親に会いたくて、小刻みに震えた腕を障子に伸ばした時だった。 青白い光を透かしていた障子が赤く染まった。 粘度の強い赤い液体が、ゆっくりと垂れて赤い縞模様をつくるさまを呆然と見つめた。 圧し殺したような悲鳴に血飛沫のとぶ濡れた音、肉を食み血を啜る音を、膜をはったように何処か遠くに感じる現実味のない頭で聞く。 『ぁ、お、ぁさん、っとさ、ん』 凍った喉からまろびでた掠れた声は、とても小さかった。 けれど、約束を破った罰だろうか。 赤い障子に黒い影が射す。 『みいぃつけたあぁ、かわいいこぉ』 障子の隙間に血に濡れた黒く鋭い爪がねじ込まれた。 ひどくゆっくりと障子が開かれ、ぎょろりと赤い血の色をした瞳と目が合った。 にたりと笑う鬼の向こうに、まんまると太った月をみた。 そうして喰われそうになった真菰を間一髪助けたのが鱗滝さんだった。 そうこうして色々あったあと、真菰は鱗滝さんの弟子として引き取られた。 鱗滝さんの元には既に兄弟子が三人いた。 まだ幼く修行に入れない真菰を本当の妹のように可愛がってくれた優しい兄弟子たちだった。 夜泣きした真菰を抱いて一晩中あやしてくれた一番上の長男気質の兄弟子は、真菰がきてしばらくして最終選別に向かった。 真菰に花の冠の作り方を教えてくれた優しくて綺麗な兄弟子は、その2年後最終選別に向かった。 はやく修行がしたいと癇癪をおこした真菰に拳骨を落として怒って、諭してくれた強面の兄弟子はその三年後最終選別に向かった。 年下の真菰を屈託なく姉弟子と呼ぶ素直で笑顔がまぶしい年上の弟弟子はその二年後最終選別に向かった。 彼らは二度と狭霧山に帰ってくることはなかった。 主を失った日輪刀を受けとる度に、中身のないお墓が増えていく。 真菰の手前、いつも通りの様子を崩さない鱗滝さんが夜が明けたばかりのまだ薄暗い時分に墓を訪れては背を丸め肩を震わせているのを知っていた。 帰ってこない兄弟子を思って泣く真菰を慰めてくれる兄弟弟子はもういない。 真菰はもう泣くのは止めた。 涙をぬぐうかわりに、刀を握る。 流した涙の数だけ刃を振るう。 真菰は必ず鱗滝さんのところに帰る 異形の鬼がにやにやとこちらを見る。 濡れたような赤い瞳がおぞましい愉悦の輝きでテラテラとぬめ光る。 「つかまえたぞぉ、かわいいきつねぇぇ」 真菰は四肢を鬼の手に捕まれ宙にぶら下げられていた。 地面には捕まった時に割れて落ちた厄除の面が転がっている。 花の模様の割れた狐面は、最終選別に向かうときに鱗滝さんがくれたものだ。 『必ず、生きて戻れ』 (生きて、真菰) 嗚呼、私も鱗滝さんを悲しませるの? 生きたい、生きたい生きたい!生きて、鱗滝さんの所に帰りたい!! なのに、四肢を掴む鬼の手を外そうと抗っても、びくともしない。 逆にどんどん力が強くなり、骨が軋む音をたてた。 「お人形みたいにぃ、手足をちぎって遊ぼうなあ。 まずは右腕からかなぁ。 」 鬼の手がゆっくりと右腕を引っ張る。 引き伸ばされていく手に、その先の痛みを想像して体が震える。 「震えてるな?かわいそうに。 だいじょうぶ、やさしく、ゆっくり、引きちぎってやるからなあぁ!!」 鬼の哄笑に、奥歯をきつく喰い縛る。 例え此処で殺されるとしても、誰が悲鳴などあげてやるものか。 例え死んでもこの鬼を喜ばせてなんぞやるものか。 胸を焼く憤怒を、憎悪を、殺意を込めて異形の鬼を睨み付ける。 ギリギリと引き伸ばされた右腕から関節の外れる音がやけに耳についた。 激痛に視界が白く染まる。 痛みにガタガタと激しく痙攣する。 のどの奥から漏れそうな悲鳴を必死に歯を喰い縛って噛み殺す。 ぼろり、と涙が頬を伝うのを感じた。 泣くな、真菰。 この鬼のために涙など流してやるな。 涙一粒、悲鳴のひとつこんな鬼のためにあげてなるものか。 突如気配もなく目の前を流麗な剣筋が閃いたかと思うと、鬼の手は切り落とされて真菰は地面へと落ちた。 地面に転がったまま、唖然と救い主の背を見上げる。 背を向けた男の背中が見える。 半分ずつで模様の違う変わった羽織を着た男だ。 大人の背丈の、選別参加者には見えない男は握った抜き身の刀を無防備に地面に向けていた。 男の背の向こうでは、異形の鬼が喚きながら宙に伸ばした無数の手で男を殴りつけようとするのが見えた。 その時、男と真菰の間の地面から鬼の手が生え、男の背を襲う。 危ない、と叫ぼうとした真菰の声は男の静かな声に遮られた。 瞬きをした間に鬼の手はすべて切り落とされ、何がおきたのかわかっていない呆然とした鬼の頚を男の刀が切り落とす。 黒い灰へと変わり崩れていく巨体の向こうにやけに冴え冴えとした満月が見えた。 月の光が反射し、男の手に持った刀が静謐な光を宿す。 真菰はその光を目で追い、刀の根元に何か文字が刻まれているのを見た。 無性に錆兎の顔が見たかった。 錆兎が無事なことはわかっていたが、錆兎の仇をとった今錆兎が生きていることを実感したかった。 朝焼けに染まる川辺の道をぬけ、家屋が並ぶ町並みをしばらく進む。 町並みが長屋から屋敷へと変わった辻を曲がると錆兎の生家の屋敷が見えた。 朝の甘やかな空気の中に混じる微かな血の匂いを感じ、義勇は錆兎の生家の屋敷まで走った。 嫌な予感がした。 立派な門構えは以前来た時と変わらず、ただ、いやに静かだった。 開け放たれていた門戸は固く閉ざされ、かけられていたはずの道場の看板がなくなっているのを見た時、自分はまた取りこぼしたことを知った。 景石に刻まれた傷に手を這わす。 鋭利な鬼の爪で抉られたであろうその傷にはしたたった血の跡が未だ残っていた。 かつて義勇をあたたかく迎えいれてくれた屋敷は血の残り香と喪失の静謐さで静まりかえっていた。 「おれは、ばかだ」 錆兎の両親が鬼に喰われることを知っていた。 だからこそ、鱗滝さんの元で出会ったのだから。 助けることは出来たはずなのに。 錆兎を殺した仇を討つことばかり考えて、錆兎の幸福を守ることを怠った。 「もどして、もどしてくれ」 崩れ落ちた膝に砂利が音をたてる。 ぼろぼろとこぼれ落ちる涙を拭うこともせず、義勇は慟哭した。 「っどうか、もう一度もどしてくれっ、もうまちがえないから、必ずすくうから……」 落ちた涙で砂利が色を変える。 いくら耳をすませても、望む声は聞こえない。 義勇の懇願だけが、喪失の静謐が満ちた庭に響いていた。 知っていたはずだった。 炭治郎に影響されて以前より鬼に対して哀れみを持つようになっている。 錆兎の仇の手鬼を斬った後、手を握ってあげたとか、あげないとか。 ちなみに錆兎の両親を救えば真菰が死に、真菰を救えば錆兎の両親が死ぬ、二者択一だった。 この義勇さんは逆行前、真菰と面識はない。 真菰という姉弟子がいたことは炭治郎に聞いて知っていた。 今回出番なかった天の声() すべてを救ってみせて、とは言ったが、すべてを救えるまでやり直させるとは言ってない 義勇さんの泣き顔が好き 純真無垢錆兎くん 両親に愛されてすくすく素直に育っていた錆兎くん。 箱入り息子で子どもらしい子どもだったが、鬼に両親を殺された後は鬼に対する義憤を胸に一本芯が通ったような原作軸錆兎になる。 武門の生まれらしく、目上への礼儀に厳しいが、義勇には弱いらしい。 水の呼吸一門大好き真菰 兄弟弟子たちに可愛がられて育った甘え上手な末っ子気質。 最終選別が終わって鱗滝さんの所に帰ったら弟弟子が増えてた。 手鬼に殺された兄弟弟子たちは真菰と一緒に鱗滝さんのところに帰ってきた。 植物のほうの真菰は神事に使われたりするとこから、生家は神社設定に。 神様に愛されているらしい……? 若干バーサーカー気質。 命の恩人の義勇さんを探しだして、鱗滝さんに紹介したい。
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